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観光を「基幹産業」へ、中長期ビジョンの中間像を共有 第12回観光立国推進協議会

  • 2026年1月23日

 日本観光振興協会は14日、観光立国推進協議会の第12回会合を開催した。計73名が出席し、地方分散や人材不足、DX活用などを柱に、観光を日本経済の基幹産業として再定義し持続的成長につなげるための観光政策の方向性を巡る議論が本格化している。

 冒頭あいさつで、日本観光振興協会会長の菰田正信委員長は、インバウンド需要の拡大と並行して課題が顕在化している点に言及し、「オーバーツーリズムへの対応、均衡のとれた双方向交流の実現、国内観光の一層需要拡大、慢性的な人材不足への対応が急務」と強調した。その上で、観光産業を将来にわたって支えるためには、従事者が誇りを持って働ける産業像を示す必要があるとし、「観光を基幹産業として、次世代に選ばれる産業にしていきたい」と述べた。

 協議会では、日本観光振興協会が策定を進めている「基幹産業としての観光が目指す姿を描く中長期的ビジョン」について、中間報告を兼ねた講演が行われた。検討会座長を務める早稲田大学大学院経営管理研究科の池上重輔研究科長・教授は、観光を単なるレジャー産業ではなく、「社会と産業をつなぎ、地域資源を体験と物語に編集するシステム」と位置付けた上で、訪日客数など従来のボリューム指標に偏った評価から脱却し、滞在価値や体験の質、地域への波及効果といった構造的な指標へ移行する重要性を指摘した。

 また、AIを活用した高度なマッチングやデータに基づくブランディングにより、知られている場所が選ばれる時代から、構造化された価値が選ばれる時代になるとして、AIを考慮した戦略が競争力を左右するとの認識を示した。

 意見交換では、訪日外国人旅行者の約7割が三大都市圏に集中している現状を踏まえ、地方誘客と分散化の必要性が相次いで指摘された。時間・空間・情報の分散設計により混雑を緩和し、地域ごとの特性に応じた商品造成や受入体制整備を進めるべきとの声が上がった。人材面では、専門職化や処遇改善を通じて、観光産業を「若者が職業として選びたい産業」に転換していく必要性が共有された。

 また、2026年7月1日から引き上げが予定されている国際観光旅客税についても議論が行われた。制度の趣旨や使途について理解を深める必要性が示される中で、「観光政策を支える財源として国民的理解を得るためにも、『出国税』ではなく『旅客税』という呼称を用いるべきだ」との考え方が示され、観光産業界として発信を工夫していく方向性が確認された。

 来賓として出席した観光庁の村田茂樹長官は、観光が人口減少下の日本において「輸出産業として成長を続ける重要な分野になっている」と述べた上で、現在策定作業が進む次期観光立国推進基本計画について言及した。計画では、第一の柱としてインバウンドの受入拡大と住民生活の質の確保を両立させることを掲げ、局地的な混雑への対応やマナー対策、受入環境整備を通じて持続可能な観光地づくりを進める考えを示した。

 第二の柱には、国内交流とアウトバウンドの拡大を位置付け、国内旅行需要の活性化に加え、若年層を含む日本人の海外旅行促進や地方空港を活用した双方向交流の拡大を図る方針を説明した。

 第三の柱では、観光地および観光産業の強靱化を掲げ、観光DXによる生産性向上や人材不足への対応、交通ネットワークの機能強化などを通じて、産業基盤そのものを底上げしていくとした。その上で村田長官は、「観光によって日本の魅力と活力が持続的に高まり、その効果を国民一人ひとりが実感できる社会を目指す」と述べ、官民一体での取り組みに期待を示した。