藤田観光・山下信典社長に聞く、70周年の先に描く成長戦略と2026年の展望
山下 計画を策定した当時と比べると、事業環境は大きく変わりました。コロナ禍で莫大な損失を被り、当初は財務体質の改善と基盤構築を最優先に進めてきましたが、優先株式の償還を含め、その取り組みは想定よりも前倒しで進んでいます。
また、数値目標も一部すでに達成しており、現在は中長期での成長を描くべき段階に入っています。
山下 まずは、コロナ禍で十分に手を付けられなかった既存施設の改装を優先し、お客さまのニーズに即した設備やサービスの改善を進めることで、施設全体の品質の底上げをすることが重要です。
あわせて、インバウンド需要の拡大を踏まえ、客室の使い勝手や滞在価値を高める投資にも注力します。海外からのお客さまが増えるなかで、これまでの客室構成が必ずしも最適とは言えなくなってきました。例えば、シングルルーム2室をツインルーム1室に改装することで、より広く居住性の高い客室へ転換するといった取り組みに着手しています。
単に客室を新しくするということではなく、スーツケースを広げやすい動線や、長期滞在でも快適に過ごせる空間づくりなど、お客さまの利用シーンに即した改善が重要だと考えています。
山下 インバウンドは引き続き成長が見込めますが、特定の国や地域に依存しすぎないことが重要です。一方で、国内市場を軽視する考えはありません。
特に日本人のお客さまは、価格と品質のバランスに非常に敏感です。価格を上げるのであれば、それに見合うサービスや体験の質を確実に高めなければなりません。そのためにも、人材への投資が欠かせないと考えています。
最終的に付加価値を生むのは人の手によるサービスであり、お客さまの細かなニーズに気付き、痒いところに手が届くような接客や提案が重要になります。「こんなことまで対応してくれるのか」と感じていただける体験の積み重ねが、価格への納得感につながり、結果として高単価でも選ばれるホテルになると考えています。
山下 M&Aの話は常にありますが、慎重に判断しています。事業内容以上に、企業カルチャーが合うかどうかが成否を分けるからです。
新規事業については、社内公募制度「BizNex(ビズネク)」を通じて多くのアイデアが出てきています。すぐに事業化できるものばかりではありませんが、挑戦する風土を育てること自体に大きな意味があります。当社の事業と親和性の高い分野に今後も注力していきます。



