【視察レポート】韓国IRパラダイスシティは本当に天国だった-MATCH 松宮英範氏
大阪万博が終了した。大屋根リングからの絶景を堪能している間、近くの大規模工事に気づいた人も多かったと思う。2030年開業予定の IR(統合型リゾート)である。万博の開幕と同時に工事が始まり、万博で盛り上がっている大阪がさらに盛り上がるのか、とIRから後退した横浜市民の私は少し寂しい思いで眺めていた。ラスベガスやマカオは数十年前に行ったことがあるが、IRとは呼ばれていなかったし、日本でも今後、最大3か所まで設置可能であるなら、まずは大阪の完成前にIRを見ておきたいと思い、一番近い韓国・仁川(インチョン)へ飛んだ。
仁川には2つのIRがある。2017年に出来た「パラダイスシティ」と2023年開業の「インスパイア」である。同じ都市に2つのIRとは、よほど最初の「パラダイスシティ」が成功したのだと考え、今回はその術を学ぶべく前者を選んだ。両リゾートとも、仁川空港から近いのだが、なかなか希望のフライトが取れず今回は金浦空港から尋ねた。仁川・金浦ともに無料シャトルバスの運行があり予約なしで乗れる。タクシーでもシャトルでも金浦から同じ 40分前後で着くので、羽田の国内線ターミナルから気軽に行ける金浦をチョイスしても全く問題ない。なぜかガイドブックやweb情報では仁川からの案内しか探せないが、金浦を使うことで日本からのアクセスももっと身近に感じるはずだ。
広大な敷地にカジノ、ウォーターパーク、遊園地、2つのホテル、ショッピングゾーン、美術館、多数のレストラン、コンベンション施設などがあり、まさに“統合型”の何でもあるリゾートが「パラダイスシティ」。カジノが中心では、決してない。アミューズメントの選択肢の1つがカジノ、というのが正直な感想である。実は入場するまで知らなかったのだが、そもそも、「パラダイスシティ」のカジノは、外国人専用で韓国人は入れない。海外に住む韓国人は例外だそうだが、日本で始まるIRは、外国人(インバウンド)が無料、日本人は6000円で週に3回かつ月に10回までの入場制限が想定されている。だからIRの利用は外国人が多くなるのだが、カジノ以外に家族や友人同士で楽しめる施設が揃っている為、実際は多くの韓国人が週末中心に遊びに来ている。
私の住む横浜ではIR反対運動が盛り上がり、賛成派の市⾧も敗れたが、その時の多くの論点は、「治安が悪くなる」「ギャンブル依存症が増える」であった。では、カジノだけ日本人NGにして外国人のみにすれば、その課題点は解決できたのはないかと思うのだが、反対派があっさり勝利しIR誘致は撤回されてしまった。「パラダイスシティ」は治安が悪いどころか、安心して小さい子供連れでも楽しめるリゾートとして成立し、2件目のIR「インスパイア」も開業したのに、日本では新しいことをするのは本当に難しい。儲かるならええやん、の精神の大阪は本当にすごい、のである(実は私も生まれも育ちも関西人)。
まずは、カジノ以外の見どころを紹介しよう。「パラダイスシティ」では、著名なアーティストの作品がリゾート全体に溢れるように存在している。歩いているとあちこちでアート作品に出会える。よほどカジノで儲かるのか、その数は3000点にものぼるというが、中でも抜群の存在感を放つのは日本人アーティスト、草間彌生氏の“金のかぼちゃ”だ。ホテルの中心にあり、この周辺で仮面舞踏会のショーも開催される。
個人的に一番印象に残った施設は、チムゾンを併設した7歳以上限定の大人のウォーターパークとも言える「シメール」。プールの中に配置されたデイベッドが美しく、超高速スライダーも素直に楽しい。すべてのデザインが凝っていて、趣の異なるサウナも多く、⾧くゆったりと滞在できる。ナイトクラブ「クロマ」は建物だけでも見応えがあり、私が訪問した日は格闘技ショーもやっていた。屋内型遊園地「ワンダーボックス」は小さい子供のいるファミリー向けだったが、多くの家族連れで賑わっていた。食事のチョイスが多いのも良い。ホテル以外にもショッピングゾーン「プラザ」にも、韓国で人気のチェーン店や有名店、フードコートなど選択肢が多い。24時間営業のコンビニもIR内にあり、とにかく困ることがない、ないものがない。
今回宿泊したのは、リゾートのシンボルで700室超の『パラダイス・ホテル&リゾート』。カジノホテルゆえか、ハイレベルの割に値段はそこまで高くはない。ホテル内にはミシュラン星付きなど3つのラグジュアリーダイニングの他、高級ブッフェレストラン「on the plate」があり、朝食は7万5000ウォン、土曜の夕食は17万ウォンと値は張るが、内容は素晴らしい。例えば夕食には、目の前で握る寿司、豪快なカニブッフェ、キャビア、様々な肉のグリルコーナー、麺コーナー、トリュフ入りパンプキンスープ、フカヒレ入りスープなど胃袋があと3つ位欲しくなるほど。
ホテル施設の中で私の一番のお勧めは、ホテルプールである。インドアとアウトドアがあり、外のプールも温水で1年中泳げるのだ。ここの冬はかなり極寒のはずだが、巨大なプールが11月末でも、凛とした空気の冷たさと、程よい温水の暖かさが心地よくマッチしている。スイミングプールって、こんなに気持ちよかったのか。ジャグジーの数も多く、ケチケチするなと言わんばかりにお湯の量で圧倒してくる。さらに、隣が空港なので昼夜問わずプールで泳ぐ頭上を世界内の飛行機が次から次に飛び交うのだから、旅好きにはたまらない。
これだけでも十分すぎるくらいだが、僕たち“外国人”には夜のお楽しみ「カジノ」まである。こちらも少し紹介しておかなければならない。カジノは24時間オープンで、エントランスで個人情報を登録し、メンバーカードが発行される。このカードでポイント貯めたり、抽選イベントに参加したり、カジノ内レストランの食事が無料や割引になるので常時必携だ。
中はとにかく広い。様々なゲームを楽しめるが、欧米人は少なく、日本人は非常に多い。キャッシャーも、案内係も、日本語を話す人がいる。ディーラーもカタコトの日本語を介すが、リゾートの半分近くをセガサミーが出資しているので当然と言える。テーブルカジノは、バカラが一番人気で非常に数が多く、ルーレットや大小は数が少ないせいか、いつも満席である。熱気あるテーブルでのやり取りに疲れた私が意外に楽しく過ごせたのは、電子テーブルゲーム(ETG)。これが気軽で面白い。ルーレット、大小、バカラなど、同じ1つの電子台で、様々なゲームを切り替えて楽しめる。掛け金もテーブルより少なく“ちびちび懸け”で OK、誰にも文句言われない。戦略を立てたり、予想するのもリアル台よりデータ表示が豊富でやりやすい。今の最新カジノである。
結局、2泊3日の間、IRから1歩も外にでなかった。出る時間がなかった。金浦空港利用だから、3日目はソウルで買い物してから帰ろう、と想定していたが、ギリギリまで遊び、シャトルバスに飛び乗った感じだ。日本最初のIRはまだ 5 年後か。。。とても待てないので、すぐに再訪してしまうかもしれない。最後に、日本人のグループは、ソウルからのオプション参加からインセンティブツアーまでそれはたくさん来ていた。近すぎて利益を上げにくい側面はあるが、満足度は高そうだ。
株式会社MATCH代表。大学卒業後、大手旅行会社で26年勤務。主に富裕層向けの海外ツアーを手掛ける。50歳を機に、コロナ禍の2021年に独立起業し、ニッチなホテルのプロデュースと集客支援を行う。インバウンド向けのミニホテルや長期滞在型のコンドミニアムホテル、関東近郊のリゾート地で展開する一棟貸切タイプのラグジュアリーヴィラなど現在12施設の運営や集客に携わる。その他、集客にお困りの施設の宿泊コンサルタントや、神奈川県で第3種の旅行業登録、中小機構のアドバイザー、各種講演や大学の講師なども務める。大阪出身、横浜市在住。




