中国の渡航自粛、運輸・観光に一時的打撃も 企業は「冷静な見方」優勢

  • 2025年12月15日

 帝国データバンクが実施した中国の日本渡航自粛に関する影響調査によると、中国政府の渡航自粛要請を受けた現時点での日本経済への影響について、「マイナスの影響がある」と回答した企業は42.8%、「影響はない」が40.8%と、ほぼ拮抗した。プラスの影響を挙げた企業は5.6%にとどまった。

 調査は12月5日から9日にかけて実施され、1197社から有効回答を得た。今後半年ほどの影響については、「マイナス」とみる企業が36.4%に減少し、「プラス」とする企業は11.1%へ上昇した。

 「マイナスの影響がある」とした企業からは、「旅客運送や飲食、小売などで客数減が見込まれる」との声が多く寄せられたほか、ビジネス渡航の減少を懸念する意見もみられた。実際、業種別では『運輸・倉庫』が53.8%と突出しており、旅客輸送や観光関連で影響が大きいことが示された。一方、今後半年の見通しでは『不動産』業が42.6%でマイナス影響を予測しており、中国人留学生や投資家による需要減を懸念する傾向がみられた。

 一方で、「中国への依存を見直す契機になる」「国内需要の掘り起こしや中国以外の市場開拓につながる」といった前向きな意見もあり、製造業などでは「脱・中国依存」による長期的なプラス効果を期待する声が出ている。また、観光関連企業の一部からは「オーバーツーリズムの緩和による地域観光への好影響」を見込む声も上がった。

 帝国データバンクは、全体として企業マインドは堅調であり、影響を限定的とみる傾向が強いと分析している。ただし、防衛省が12月上旬に発表した中国機によるレーダー照射問題など、日中関係の緊張が続く中で事態の収束は見通しにくい状況にある。今後も観光産業やビジネス渡航の回復、サプライチェーンの安定化には時間を要する可能性がある。

 今回の渡航自粛をきっかけに、日本企業は観光や生産面での中国依存を見直し、国内市場や新興国市場へのシフトを進める動きが今後一層求められるとした。