JR東日本、モビリティ中長期戦略公表 訪日需要創出や山手線の自動運転など盛り込む

  • 2025年9月10日

 JR東日本は9日、モビリティ事業として初の中長期成長戦略「PRIDE & INTEGRITY」を策定した。2045年の未来像を念頭に10年後の姿と成長ロードマップを示し、2031年度にモビリティ事業の営業収益2兆円超(2024年度比+2000億円超)を目標に置く。戦略は安全レベルの向上、収益力向上・社会課題解決、技術革新・構造改革、社員の働き方改革の4本柱で構成され、旅行需要の質的拡大や移動体験の高度化などを推進する方針だ。

 まず安全を経営の最優先に据え、デジタルツインやAIによる予兆管理、衛星を活用した踏切保安・列車制御の導入、ホームドアの着実な整備を進める。2031年度までに鉄道運転事故30%減、ホームにおける人身障害事故80%減(いずれも2023年度比)を掲げ、異常気象対応力の強化やプロセス管理の高度化で「究極の安全」を追求する。

 収益面では、新幹線の増備・増発や空港アクセスの強化により輸送力と利便性を底上げする。羽田空港アクセス線の営業開始や他社戦との連携拡大により、訪日・出国動線のシームレス化を図る。加えて、長距離夜行特急の展開や車内体験の高付加価値化、コンサートの戦略的誘致など来訪理由の創出に踏み込み、海外主要予約サイトとの連携やインフルエンサー活用でインバウンドを取り込む。地域では駅を核にしたまちづくりや、バス・タクシーとの一体運用で「モビリティのベストミックス」を実装し、二地域居住や物流サービス「はこビュン」を通じた交流人口拡大も狙う。

 技術と構造の改革では、完全チケットレスやウォークスルー改札、衛星測位を活用した新制御、車両蓄電池の高性能化による架線レス走行、水素・フュージョンエネルギーの追求、自動運転やワンマン運転の拡大、CBMによるメンテナンス高度化などを推進する。システム・車両の外販やコンサルティング、PM/CM事業の拡大も位置づけ、国内外のモビリティ市場での収益源多角化を図る。人材面ではAI・ロボットなどの新技術を活用し、省力化・省人化と業務の変革を推進する。

 2035年までのロードマップには、東北新幹線の一部区間で320km/h運転、E10系新幹線の営業投入、ウォークスルー改札の使用開始、山手線への自動運転導入、羽田空港アクセス線の営業開始などが並んだ。