OTOA、体制強化と観光庁への提言示唆 会長には大畑氏再任

日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)は6月4日、都内で2025年度通常総会を開催し、大畑貴彦会長らが記者団の取材に応じた。業界の持続的な発展に向け、次世代育成と運営体制の再構築を急務とする方針を示した。
任期満了に伴う役員選任にて、会長への再任が決まった大畑氏は冒頭、新たな理事の募集に応募がなかったことに言及。「新陳代謝が不可欠」と語り、新委員会の設立と若手の登用による組織刷新の必要性を強調した。各委員会ではAI活用や顧客ニーズ対応、感染症リスクへの備えなどを重点課題に位置付け、若手メンバー中心の構成を想定しているという。
新たに副会長に就任したミキ・ツーリスト取締役執行役員の櫻井隆文氏は「旅行会社を介さず旅行者が情報を得る現代において、オペレーターの役割を再定義する必要がある」とし、AIを活用した業務効率化や付加価値創出を図る必要性を指摘した。また、感染症対策については「現地との即時連携体制の整備が求められている」と述べ、ネットワークを生かした迅速な対応体制の構築を課題とした。
財政面についても言及があり、会員数の減少が協会運営に与える影響は小さくない。大畑会長は「業界自体が縮小する中、一定の統合は避けられない」とし、将来的には半数程度までの会員減を想定する考えを明かした。一方で、会員のメリットとなるコスト削減策として、海外拠点での駐在員や車両の共同利用といった会員間連携の強化を提案し、持続可能な運営体制の構築を目指す意向を示した。これに対し、荒金副会長は「現地ガイド不足も深刻で、業務の共有や合同運営による効率化が急務」と指摘した。
また、アウトバウンド振興においては、低いパスポート保有率や若年層の海外離れなどについて言及し、長期的視点での政策継続が不可欠と指摘。大畑会長は「5年、10年単位で成果を見据えた施策が必要」と訴えた。OTOAとして観光庁への政策提言も視野に入れ、今後具体的な提言書の作成を進める方針だ。
総会の挨拶で大畑会長は、「我々自身も臨機応変に変わっていく必要がある一方で、いかなる状況であろうとも、いつの時代であろうとも、我々にとって"旅行の安全と質の確保"は変わることのない普遍的価値観」と語っており、ツアーオペレーターの立場から引き続き海外旅行復活に寄与していく姿勢を示した。