【インタビュー】探検クルーズHXが描くアジア戦略、分社化を機に日本と旅行会社との連携深化を強調

  • 2025年6月22日

 2025年4月、探検クルーズ専門ブランドフッティルーテン・エクスペディションズ(HX)がフッティルーテングループから分社化し、独立ブランドとしての運営を本格化させた。この戦略の背景には、商品特性の違いや市場の明確化といった狙いがある。今回はアジア・コマーシャルディレクターのジョー・ゾウ氏に加え、カントリーマネージャー日本・韓国代表の久野健吾氏にも話を聞き、アジア地域における事業展開の方向性や旅行会社とのパートナーシップ強化策について意見を伺った。

(左から)久野健吾氏、ジョー・ゾウ氏
-2025年4月に分社化を果たしましたが、その戦略的な意図とは。

ジョー・ゾウ氏(以下敬称略) HXとして探検クルーズに特化するため、運営上の分離が必要でした。従来はHurtigruten Norwayと混在していたため、顧客にとっても混乱がありました。今回の独立により、商品特性や価格帯の異なる2ブランドを明確に区別し、HXの専門性と柔軟性を強化できます。私たちは、サステナブルで科学的な探検旅行のリーダーとして、よりグローバルな存在感を高めることを目指しています。

-独立後の体制面ではどのような変化があったのでしょうか。

ゾウ 本社機能をロンドンに移し、HX専用の営業、マーケティング、PR体制が確立されました。船名や文化的背景など、ノルウェーの伝統は継承しますが、ブランドカラーの刷新やデジタル基盤の整備などを含め、全体的に大きな投資が行われています。これは市場での認知をより高め、独自ブランドとして確立するための一環です。

-HXの強みについて教えてください。

ゾウ 当社は1896年に北極圏のスヴァールバル諸島への探検航海から始まった、世界最長の歴史を持つ探検クルーズブランドです。現在は5隻の専用船を保有し、すべてが極地旅行を前提に設計され、最新の2隻はPC6(ポーラークラス6)の最高位の耐氷クラスの性能を備えています。探検チームは常勤体制で、活動・教育・安全性を統合した没入型の体験を提供しており、科学と旅行を融合した『HXサイエンスプログラム』は他社にない強みです。

-環境への取り組みについても積極的ですね。

ゾウ はい。2008年に重油の使用を廃止し、2018年には使い捨てプラスチックを全船から排除しました。MSロアール・アムンセンやMSフリチョフ・ナンセンといったハイブリッド探検船を導入し、HXファンデーションを通じた社会貢献も行っています。船内では乗客による清掃不要とのグリーンサインを通じて寄付が行われ、例えばグリーンランドの教育支援にも使われています。