オンライン全盛時代に問う、"顔の見える旅行業"の真価-三洋航空サービス中塚裕博社長

  • 2025年6月4日
-広告戦略について教えてください。

中塚 広告は、オールドメディアと言われる新聞広告に注力しています。新聞購読者層は50代以上の方が多く、当社の顧客層と一致します。大手旅行会社は、海外・国内ツアーなど売上が大きい出稿が多く、一方で中小企業はそもそも広告に予算をかけない傾向があります。当社はその中間を狙い、6名規模の日帰りバスツアーといったニッチな層に積極的に取り込んでいます。こうした取り組みを通じて、近場の依頼から始まり、やがては遠方への案件相談につながることを目指しています。現在の当社内における取り扱い比率はおよそ5%ほどですが、小さな引き合いから大きなビジネスに育てていくイメージです。

-地域密着の姿勢と、今後の業界展望についてお聞かせください。

中塚 日本の人口減少や消費の縮小が進む中、外貨をもたらしてくれる訪日観光客の重要性はますます高まっています。実際、地方都市での百貨店閉店の背景にも、インバウンド需要が取り込めなかったことが影響していると聞きます。

 観光地としての神戸の魅力をさらに高めていくには、いくつかの課題もあります。たとえば、夜間に楽しめる「にぎわい」やエンターテインメント性のある観光スポットは充分とはいえず、大阪のように夜も活気のあるエリアの整備が求められます。また、宿泊施設についても、ホテルの数自体が限られており、海外でも知名度の高いブランドホテルが少ないことは、今後のインバウンド戦略において重要な改善ポイントになると考えています。

クルーズやフェリーについても、船旅に興味を持つ層が増えていることから、商品造成に注力しています。社員も研修を通じて知識を深めており、特に高齢者層や富裕層など、時間に余裕がある顧客層からの反応も良好です。今後は寄港地での観光や送迎手配を含めたワンストップの提案力を強化していく方針です。

-最後に、観光業界関係者に向けたメッセージをお願いします。

中塚 私たちはお客様の安心と満足を第一に考え、お客様一人ひとりに寄り添ったサービスを大切にしています。ネットではできない、地域に根ざした仕事にこそ未来があると信じています。これからも安心で心に残る旅を支える会社でありたいと思っています。