JNTO、2024年は地方誘客に重点-アジアで大規模キャンペーン、欧州市場の拡大も

  • 2024年4月25日

JNTO理事の中山氏  日本政府観光局(JNTO)は4月24日に開催した定例メディアブリーフィングで、2024年度の主な取り組みを説明した。今年度は昨年3月に閣議決定された「観光立国推進基本計画」で掲げられた「持続可能な観光地域づくり戦略」「インバウンド回復戦略」「国内交流拡大戦略」の3本柱に引き続き取り組むとともに、地方誘客に向けた取り組みに重点を置く方針だ。メディアブリーフィングで登壇したJNTO理事の中山理映子氏は「今年度は訪日マーケティング戦略をベースに地方誘客を進めていきたい」と意気込みを述べた。

 同氏は訪日客が増加傾向にあり、今年の3月は単月として過去最高の308万1600人を達成したことを改めて説明した。一方で宿泊旅行統計調査を見ると、2023年一年間の宿泊は東京都が2019年比46%増と突出して回復していることを解説。地方については大阪府(19年比3%増)と京都(19年比1%増)が19年並みまで回復しており、他の地方についても「19年比で見るとだいぶ戻ってきている」ものの、「地方と都市のギャップは依然としてあり、いかに縮めていくかが引き続きの課題」だという。

 地方の回復の遅れについては、地方への訪問意欲が高くリピーターの多い台湾・香港・タイからの訪日客の回復が遅れていることが一因だ。中山氏は「ボリュームが期待できるアジア市場の回復を早めるとともに、長期滞在が多い欧米豪市場の底上げで泊数が伸びてきているのでそこに手を入れていきたい」と話した。

 アジア市場では韓国、中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナムの10市場の訪日ライトリピーターを対象に、大規模キャンペーンを実施する。

 具体的にはOTAと中国、韓国、香港、台湾、タイ、シンガポール6市場を重点地域として予約・購入につながる販売促進キャンペーンを展開。各地方運輸局や広域DMOとも連携し、送客強化地域を選定してエリアごとにプロモーションを実施する。さらにメディアやインフルエンサーの招請も4市場以上でおこなう予定だ。航空会社とは台湾・香港・タイの3市場をターゲットに、地方空港への直行便をフックにした販売促進キャンペーンを2023年度に続いて実施する。

 さらに、欧州市場からの誘客も重視。今年度の新たな取り組みとして、航空会社や旅行会社と欧州6市場を対象に、国内線利用促進を含む共同広告キャンペーンを展開する。

地方での消費額増をめざし高付加価値旅行を促進

JNTOの伊藤氏  さらに、地方での旅行消費額の増加をめざし、高付加価値旅行の推進に引き続き取り組む。今年度は観光庁の「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり」モデル観光地11地域と連携してプロモーションを実施していく方針だ。

 JNTO市場横断プロモーション部高付加価値旅行推進室マネージャーの伊藤亮氏によれば、今年度は高付加価値旅行向けのサービス内容の集積・蓄積をはかり、JNTOの高付加価値旅行の特設ウェブページにモデル観光地を紹介するページを年度内に新設。商談会で活用可能なセールスツールも新たに作成する。また、高付加価値旅行の手配をおこなうDMCとモデル観光地のDMO・地方公共団体、サプライヤーのマッチングイベントを昨年度より規模を拡大して実施する計画だ。

 BtoBのセールス強化にも取り組む。ILTMなどの高付加価値旅行商談会に出展する一方で、国内に海外旅行会社を招請して商談会やモデル観光地のファムツアーを実施する予定。23年度も実施しており、伊藤氏によれば伝統工芸の職人をはじめとしたプロフェッショナルと接点・交流があるファムツアーが人気だったという。また、参加者からは東京と地方を組み合わせたツアー造成を検討するため、東京の視察を希望する声やDMCとの商談を希望する声があがったという。

 BtoCに対しては情報発信を強化する計画で、富裕層向けのグローバルメディアを招聘し、モデル観光地の魅力を伝える番組制作・発信も昨年に引き続き取り組む。

 さらに、JNTOではアドベンチャートラベルの推進を継続。Adventure Travel Trade Association (ATTA)と連携し、11月の沖縄で開催される「AdventureWeek」に向け観光素材の磨き上げ・ガイド研修をおこなうという。

 このほか、サステナブル・ツーリズムや大阪・関西万博をテーマにした観光コンテンツの拡充・情報発信、能登半島地震の影響を受けた北陸地域の復興に向けた取り組みも実施。北陸については北陸新幹線延伸をフックにした情報発信、メディアやインフルエンサー、旅行会社の招請事業を実施する。