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【新春インタビュー】旅行の本格再開に向けて-JATA志村理事長、池畑事務局長

  • 2023年1月4日
-10月から開始された全国旅行支援については業界内でも賛否がありますが、どのように評価していますか。

池畑 国内の旅行需要喚起策は以前から求めてきており、JATAではその実現のためにワクチン検査パッケージやモニターツアーを繰り返し実施してきました。本来であればGo Toトラベルのように単一ルールで全国一斉に実施できると良かったのですが、残念ながら「Go Toトラベルが感染を広げた」というエビデンスのない風評もあってそれが叶わず、次善策として全国旅行支援が実施されています。47都道府県が主幹として行っているため、観光庁がルールの統一などを通達しても限界もありました。一方で、あれだけの予算を割いて実施していただいているので、会員の皆様は支援を活用していただいて、問題があるところは私たちが一緒に直しながら、少しでも利益を出してほしいと考えています。

-旅行業界でも特に疲弊しているのは海外旅行事業者ですが、そちらへの支援は求めていきますか。
池畑氏

池畑 訪日旅行や国内旅行には国としても予算を取りやすいですが、海外旅行の需要喚起策には限界があります。そこで観光庁も、双方向で人流を促進する立場でメリットが出せないかを検討しています。現在、観光庁としては初めてアウトバウンドの担当を3名置いて海外旅行の振興を図っているところで、我々も一緒に促進していきたいと考えています。

 次に重要なのは、雇用調整助成金や持続化給付金、月次支援金などの経営支援策です。あらゆる観光団体、交通・運輸団体とも連携して、今後も要望を続けていかなければなりません。会員の皆様にも、そこで少しでも力を蓄えていただければと思っています。

 一方で、海外旅行のプランナーが国内旅行に挑戦したり、テーマ性のある旅行を企画したりして成功している会員の例も少なからずあります。こうした取り組みは、海外旅行の取引先である旅行会社からの訪日旅行の誘客にも繋がるでしょう。その意味で、質的な転換が図れた部分も多大にあったと思います。海外事業者の皆様には、業際を広げていくためにもこうしたチャレンジをしてほしいと考えています。

-海外旅行の促進には消費者の動機づけが必要だと思います。例えばパスポート取得費用の無料化など、具体的に要望していることはあるのでしょうか。

志村 貿易赤字になるため政府の立場としては日本人の出国旅行の費用を補助することは難しいですが、例えば空港会社や自治体など国以外の公的団体で、若者の海外旅行支援策としてパスポート取得費用を応援するなどの制度を実施しているところはあります。留学や長期滞在といった切り口も含めて、こうした取り組みを推進していきたいと考えています。

池畑 海外旅行の促進には、地方空港の路線を守ることも必要です。路線を維持していくためには、インバウンドで利用してもらうことももちろんですが、アウトバウンドも不可欠です。従来であれば、グループなら空港までのバス代の補助や空港の使用料を免除するなどの手法がありましたが、知事会とも連携しながら、搦め手で進めていかなければならないと思っています。

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