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現場目線の予約システムを追求、宿泊者と施設の高度なマッチングを目指す-CHILLNN永田諒氏

-宿泊業界では人材不足が深刻ですが、予約システムを提供する企業として、今後どのように取り組んでいかれますか。

永田 宿泊業界に限らず、日本の多くの業界でDXが叫ばれています。私も一技術者として非常に興味があるのですが、一方で宿泊施設の人材が行っているのはあくまでも人と人とのコミュニケーションで、感情労働だと思っています。様々なDXのツールが出てくるなかで、「感情報酬」が盲点として軽視されてしまっていのではなかと感じています。

 システムで業務を支援する立場として、関連ホテルのスタッフからは、ホテルの経営層には言いづらいことを聞く機会も多くあります。そのなかで、特にこのコロナ禍による値崩れや全国旅行支援による割引きにより、客層が悪化してしまったという話を聞きます。普段であれば泊まらないような方も宿泊されるようになったことや、現場のスタッフも入れ替わりコロナ前を知らないスタッフが増えてきているなか一気に忙しくなったことでサービスの品質が低下してしまい、結果としてクレームが増えているというのです。

 ですが、クレームをどんなに頑張って処理しても、売上としては全く変わりません。経営者や運営側には見えないコストとして消費されてしまっているのです。接客が好きだったのに、経営的リソースの支援を得ることができず、給与に見合わない心理的負担を強いられ、退職につながってしまうというケースが多くなってきていると聞いています。

 人材が不足しているマーケットでは、事業運営を継続するという観点において、お客様の価値と従業員の価値がどんどんつり合い、場合によっては従業員の価値がお客様の価値を超えて高くなっていきます。私たちは、お客様には事前に宿泊施設が提供したいサービスの情報を知っていただき、現場のスタッフが自分達の意思で最高のホスピタリティを提供したいと思えるような、お客様と施設との高度なマッチングを支援していかなければいけないと思っています。

 CHILLNNを介して予約していいただいたお客様は、OTAからのお客様に比べて質の高いお客様が多い、という評価を多くの施設様からいただいています。マッチングの精度をさらに高めて、ホテリエの方々がホスピタリティを自ら高めていきたくなるようなお客様を送客できる予約システムを実現したいと思っています。

-観光産業に従事する方へメッセージや提案をお願いいたします。

永田 京都では、今も土日でも休館している施設を目にします。せっかくマーケット状況が戻ってきても、従業員がおらず、うまく収益に結びつかないという状況があるのではないかと感じています。

 宿泊施設を運営する上では、従業員自身がここで働きたい、サービスを提供したいと思えることがとても重要だと思っています。偉そうな言い方になってしまい恐縮ですが、従業員がどうしたらもっと楽しく働けるか、どうしたら負担を減らせるかという観点で経営を見直していく必要があるのでないでしょうか。

 確実に京都では外国人の方を見る機会も増えています。ここで一緒に踏ん張って、人材的な魅力を高め、稼働率よりもADRを高め、顧客満足度を高め、収益貢献に対する接客業の価値を高め、給与も上げていけるようにできたらと考えています。別サービスで、接客業の最終的な収益への貢献の可視化にも取り組んでいこうとも検討しています。是非、業界全体で、宿泊業界を魅力のある業界にしていきましょう。

-ありがとうございました。