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豪州の「今」を駐在員の視点から-深刻化するホスピタリティ産業の人手不足

  • 2022年8月29日

深刻なホスピタリティ産業の人手不足

 オーストラリアのホスピタリティ産業は、深刻な人手不足に見舞われ「労働者危機」などとも言われています。ホテルでは部屋の清掃が追い付かないなどオペレーションに影響を受けており、あえて客室の7割から8割程で販売を止めているところも多いと聞きます。

 中・大規模なレストランでは、客席の一部を閉めたりして、現有スタッフでまわせる範囲での営業を余儀なくされているところも多いようで、当社と長く取引のあるレストランでも、今年はインバウンド団体客は受け入れられない、と予約を断るケースもいくつか出てきました。

 現地メディアでは、あるレストランでは最低賃金の20%以上高い賃金を提示しているのにも関わらず「誰も応募してこない」とオーナーの声を紹介し、シドニー郊外のマクドナルドでは、応募者に1000豪ドル(約9万4000円)の支度金を支給していると報道しています。コロナ禍で離職した労働者が転職先の業種に留まりホスピタリティ産業に戻ってこないこと、ホスピタリティ産業の大きな担い手となっていた移民、留学生等の母国帰国と新規流入が約2年間停止されていたこと等が理由として挙げられます。

 こうした状況から、日本からの観光客が本格的に回復した時に、現地でお客様をご案内する日本語ガイドが足りなくなる事態が強く懸念されています。この2年間まったく仕事が無かったため、ほぼ全ての日本語ガイドは他の仕事へ移っていますが、当社の調査によれば、およそ半分程度しか再び日本語ガイドへ戻ることを希望していません。繁忙期のガイド確保、大型団体の旅行実施が難しくなることが考えられます。

【参考】
オーストラリアの最低賃金は、職種、レベルにより細かく「AWARD」で決まっています。「Restaurant Industry Award」では、5段階のうち最低レベルであるレベル1の最低時給は平日20.92豪ドル(約1967円)、土曜日はその1.25倍 日曜日は1.5倍、祝日にいたっては2.25倍の47.07豪ドル(約4425円)と定められています。(当局に認可を受けた企業労働協約を締結している場合はこの限りではありません。)

お盆のころのケアンズ空港、関西空港行きジェットスター航空チェックイン・カウンターの様子。家族連れが30%、シニア夫婦が20%、若者カップルが20%、女性同士が10%、残りが女性一人旅、日本人以外といった乗客構成。団体客、現地ガイドにエスコートされた乗客は見当たらず。

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