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【仕事を変える】大手旅行会社から独立、ニッチな宿泊需要を取り込む-MATCH松宮英範氏

  • 2022年7月25日
-コロナ禍で思い止まるのではなく、背中を押されたのですか。

松宮 そうです。旅行は不要不急とされることが増え、それまでの仕事を完全否定されたような気持になりました。旅行会社勤務だと言えば周りから同情される状況にも疑問や居心地の悪さを感じました。

 会社が休業状態となりリモートワーク化やオンライン化も進み、生活が一変。自宅で仕事などできないと考えていましたが意外と快適で、通勤がなく睡眠時間は増え、飲酒の機会も減り、体調が良くなり、良い事ずくめでした。そんなタイミングで早期退職の募集があったので応じ、2021年の3月に退職。準備期間を経て今年1月にMATCHを立ち上げました。

-コロナ禍中の独立に不安はなかったのですか。

松宮 旅行業界でもよく「ピンチはチャンス」と鼓舞する言葉を聞きましたが、正直なところ業界の先行きには不安だらけでした。ただし自分の起業については何とかなると感じていました。将来の上場を目指すベンチャーではないし、オンラインで何でもできる時代だし、社長1人でやっていくにはこの環境変化はプラスです。最初から大きな投資をしたり、見栄を張って高い家賃の事務所を構えたりしなければどうにかなります。

-起業からの半年間にどのような苦労がありましたか。

松宮 会社の登記や社会保険への加入、年金の手続きなど煩雑な面はありましたが、全てが初めてで興味深い体験でした。一方で改めて痛感したのは旅行業の特殊性です。ライセンス取得に必要な書類の多さや、ライセンス費用、協会加盟料の高さには驚きました。「旅行業は電話1本で開業できる」と聞かされてきたのは真っ赤な嘘ですね。第1種登録に必要なのは3000万円。もともと募集型をするつもりはなく取得したのも第3種ですが、それにしても「金がないと募集もできないのか」と感じてしまいます。業界団体には改革が必要ではないかと言いたいですね。

-MATCHの事業内容を説明してください。
御徒町の一棟貸切バケーションレンタル「龍馬ザ・タワー」

松宮 事業は4つあります。1つ目は宿泊事業。現在、東京・神奈川・静岡に計10施設を運営しています。「MATCHのニッチなホテルプロデュース」をキャッチフレーズに、一般的なホテルや大手ホテルとは需要が重ならない、コンドミニアムホテルやペットと泊まれる宿、一軒家・一棟貸の施設だけを展開しています。

 建物にはオーナーがいて、こちらで開発支援と集客・運営を担います。MATCHはシステム構築と集客を行い、妻が代表を務める別会社がゲスト対応や清掃などのオペレーションを担います。

 2つ目の事業は新築ホテルの開発支援と集客を担う事業です。こちらはオーナー自身がゲスト対応等のオペレーションを行います。オーナーにとってはオペレーションのノウハウを蓄積でき、収益の取り分も増えるメリットがあります。我々も少人数で全施設のオペレーションをできるわけではないので、両者にとってプラスがあります。

 例えば、支援している施設の1つに、来年3軒のオープンを予定して現在河口湖で建築中の一棟貸ホテルがあります。10名が宿泊できるヴィラスタイルの施設で、プライベートプールにドッグラン、バーベキュー設備があります。この種の宿泊施設はコロナ禍でも需要があり、満足度も高いことは分かっています。そして供給量が圧倒的に少ない。例えば宿泊サイトで「プール有/ペットOK/一棟貸バケーションレンタル/関東圏・長野県」で検索しても5軒しかヒットしません。

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