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大台達成後のアウトバウンドの行方は-新たなJATA海旅部長に聞く

元KNT-CT役員の稲田正彦氏が就任
新型コロナ後の回復は「潮目見逃さず」

-JATA会員企業の大多数を占めるリアルエージェントとOTAとの競合について、現在のお考えをお聞かせください

稲田氏稲田 リアルエージェントは今後、何を武器としていくかを見極める必要がある。OTAのフィールドで勝負しても意味がないが、OTAには手が出しにくいテーマ旅行や周遊旅行など、旅行会社の役割が求められる旅は必ずある。OTAから需要を取り戻す、奪い取るという考え方ではなく、棲み分けを意識していくことこそ重要だ。

-昨年のトーマス・クックの破綻はリアルエージェントに大きなショックを与えました

稲田 トーマス・クックの破綻は大手を含むすべての旅行会社が今後、どのようにして収益源を発掘し、時代の変化に見合ったビジネスモデルを開発していくかを問われていることを象徴している。古い枠組みのなかで生きていこうとすることは大手、中小を問わず厳しい。むしろ大手の方が、古いビジネスモデルに依存している面があるのではないか。

 コモディティ化した商品が多い大手より、むしろ中小の方が専門性を磨いたり、顧客との関係を強固なものにしたりして、未来が広がる可能性がある。実際に、大手が太刀打ちできない形で顧客に密着した旅行会社が数多くある。

-世界的に拡大するオーバーツーリズム問題についても、お考えをお聞かせください

稲田 オーバーツーリズムは、旅行会社側にサステナブルツーリズムという課題を突き付けている。旅行会社としてできる取り組みの1つには旅行先の分散があり、限られた目的地に集中的に送客するのではなく、新しいデスティネーションや魅力を発掘して、需要を分散させることが考えられる。例えば、先ほども述べた「韓国絶品グルメ30選」は韓国の各地の食の魅力をクローズアップしたもので、地方送客の推進力になるはずだ。

-目下の最大の課題と言える、新型コロナウイルスへの対応についてはいかがでしょうか

稲田 感染症問題はいずれ必ず収束の時が来るので、その際に迅速かつ有効に需要回復のための手を打てるよう、情報を収集し、準備をしっかり整えておくことに尽きる。潮目の変化を見逃さないことが最も大切で、SARSや新型インフルエンザの流行の際の経験が生きてくるだろう。

-最後に、任期中の目標を教えてください

稲田 目標は、旅行会社が売り上げを右肩上がりに伸ばせていけるよう環境を整えることだ。アウトバウンド促進協議会の活動などを通じて、売れる商材をできる限り増やしていくことが、この目標の達成につながると考えている。

-ありがとうございました