専門性で生き残る:北欧旅行のフィンコーポレーション

各国とのネットワークや自社手配が強み
「北欧チーム」による市場活性化にも注力

-新規の顧客はどのように獲得されていますか

美甘氏美甘 常に新しいテーマや切り口で商品造りに取り組み、北欧への旅行に興味を持っていただくことを考えています。例えば最近では、今年2月に公開された日本映画「雪の華」のロケ地であるヘルシンキのツアーを設定したり、昨年から今年にかけて東京都美術館で開催されていた「ムンク展」にあわせて、ムンクが暮らしたオスロの街を散策するツアーを催行したりしています。

 北欧については大使館、政府観光局、航空会社、旅行会社の連携がとても緊密で、良いビジネス環境だと思っています。新しいことに挑もうとする時には、いつも「北欧チーム」が一丸となって動くので、事がスムーズに運びます。

-デスティネーションとしての北欧の魅力とは

美甘 旅行について言えば、安全・清潔・快適の3点を挙げることができます。安全については、特に心配な夜間の行動も、夏は白夜で明るいですし、冬は寒いので出歩く人が少なく(笑)、危険が少ないです。清潔さや快適さについては、ホテルや観光施設、トイレなどはいずれも清潔ですし、交通機関はほぼオンタイムで運行しているので、ストレスフリーです。

 個人的には人間が魅力的だと思います。北欧は手厚い福祉で有名ですが、国民1人ひとりに国の目が行き届いていて、人々があくせくしていません。皆さんゆったり暮らしていますし、自分たちが世界レベルで見ればマイノリティであることを自覚しているので、日本人旅行者にも親切です。

-今後の目標を教えてください

美甘 規模については、スタッフ1人ひとりの顔が見え、すべてのお客様の行程を把握できる現在の状態が理想的だと考えています。例えばツアーオペレーター部門を拡大し過ぎると、他社に販売した航空券やホテルなどに関してトラブルが起こっても把握が難しく、対処が遅れることがあります。

 また、お客様には本当に北欧を好きになってもらいたいと思っています。最初はツアーで北欧旅行のポイントやコツをおさえ、2度目からはより自由な旅ができるよう、今後もきめ細かなサービスで対応していくつもりです。

-顧客がOTAに流れていく不安はありますか

美甘 当社も個人旅行を手配しているので、競合といえば競合ですが、コンサル力や情報力では自信があるので、OTAについては「脅威」というほどには感じていません。当社がめざしているのは旅のパーツの提供ではなく、個々人の趣味嗜好や目的、季節、最新情報を踏まえた上で、「楽しかった」と笑顔で言っていただける旅行プランを提案することです。また、観光だけでなく、福祉や教育などの視察、取材のコーディネートなど、北欧に関する幅広い需要にお応えできる専門家集団をめざしています。

 OTAが拡大する一方でインターネットは、地方支店の開設や大型の広告展開が難しい中小の旅行会社に、東京のオフィスにいながら日本全国のお客様とつながるチャンスを与えてくれます。当社もソーシャルメディアを活用し、ツアー情報に加えて現地の最新情報やインスタジェニックな画像など、北欧の文化全般を発信しており、フォロワーは順調に増加しています。

 ただ、何度も旅行プランの相談に対応したお客様が、結局はOTAでパーツを購入されるケースもなくはないです。大きな問題になる前に、コンサルティングの有料化などの手を打つ必要はあると感じています。

-ありがとうございました