専門性で生き残る:北欧旅行のフィンコーポレーション

各国とのネットワークや自社手配が強み
「北欧チーム」による市場活性化にも注力

美甘氏  OTAの躍進や相次ぐ他業界からの参入などにより、環境変化が進む旅行業界。しかしそのような状況でも全国にはまだまだ、専門分野に特化して蓄積した経験とノウハウで勝負し、利用者の信頼を獲得している旅行会社は多い。本誌では今年に入り、そのような専門型旅行会社の現況や今後の展望を紹介する新たなシリーズとして「専門性で生き残る」を開始(第1回)(第2回)。第3回は、「北欧旅行フィンツアー」とランドオペレーターの「ノルディックジャパン」の2つのブランドで広くその名を知られる、北欧旅行専門のフィンコーポレーションの代表取締役社長を務める美甘小竹氏にお話を聞いた。

-最初に、フィンコーポレーションの歩みや概要についてお聞かせください

美甘小竹氏(以下敬称略) 創業は1983年です。最初の10年ほどはサンタクロースを切り口にした商品や、北欧のオーロラに特化した商品などに注力し、97年には手配部門の「ノルディックジャパン」を開設して、個人向けに手配旅行の取り扱いも開始しました。日本旅行業協会(JATA)の「ツアーグランプリ」では99年に「市場開発特別賞」、2006年に「企画アイディア特別賞」、08年に「ニューツーリズム開発部門グランプリ」を受賞しています。

 年間の取扱人数は約3000名で、取扱額は約20億円です。社員は東京のオフィスに15名いますが、そのほかにオーロラのシーズンには、現地にノルディックジャパンの契約社員が8名駐在します。オーロラについては専門的な知識やサービスが必要なので、フィンランドのサーリセルカとレヴィ、スウェーデンのキルナで、スタッフがツアー参加者のお世話をします。

-美甘社長の経歴についても教えていただけますか

美甘 大学卒業後に航空会社のキャビンアテンダントをしていましたが、8年ほどで退職し「何か好きなことをしたい」と思っていた1994年に、この会社に出会いました。もともと旅行が好きだったこともありますが、航空会社でのお客様とのお付き合いが空の上だけに限られるのと比べて、旅行会社の場合は、旅を企画する段階から帰国後に感想を伺うところまですべてに関わることが魅力的でした。また、あまり記憶はないのですが、幼少期には家族でスウェーデンに暮らしていたので、これも縁と感じています。

 入社後は航空会社での勤務経験があったことから航空券の仕入れや予約・販売を担当し、その後に商品の企画やマーケティングなどを経験しました。入社した頃はまだまだ「北欧専門」という打ち出しが弱かったのですが、時代がデジタルへと移行し始めていたこともあり、インターネットでのピーアールや作業の効率化などを自由にさせていただきました。

-社長に就任された経緯は

美甘 事業承継の話があったのは、入社して20年目の2014年です。加速するITの進歩などを見据えて、大手の傘下に入ることなども検討しましたが、最終的には当時の社長が会長に就任し、20年間この会社に携わってきた私が引き継ぐことになりました。話があった時は驚きましたし、「自分に務まるのだろうか」と自問自答しましたが、ベテラン社員の支えもあり、無事に5年目を迎えました。