週間ランキング、1位は関空新路線、「リアル」の未来も複数

[総評] 今週の1位は、関西国際空港においてジェットスター・パシフィック(BL)がハノイ線とダナン線を開設した記事でした。最近の関空は新規就航や増便がものすごい勢いで続いており、年末にはカンタス航空(QF)が週3便の季節運航ながらシドニー線を復活させるほか、ホノルルへも今年6月末のエアアジアX(D7)に続いてスクート(TR)も18年6月までに乗り入れたい考えを表明しています。

 この夏ダイヤの国際線便数は、期初に想定されていた数値のみでも1週間あたり1126便で、低迷していた11年夏の581便からするとほぼ2倍の規模となっています(リンク)。

 この好調さの背景には、おそらく分析するまでもなくインバウンドとLCCがあるでしょう。特に、12年に関空を拠点として事業を開始したピーチ・アビエーション(MM)の成功がその大きな要因であることは断言して良いでしょう。

 「ピーチ」の名前が発表された時には「桃太郎ジェット」などとネット上で揶揄されていたような記憶がありますが、その記憶が不正確だったとしても当時の受け取られ方は「おいおい大丈夫か」といった感覚が多かったのは間違いないように思います。

 同時期に同じ全日空(NH)の出資によって設立された旧エアアジア・ジャパンはあっという間に失速して同ブランドでの運航継続を断念したわけですが、MMはそれを横目に代表取締役CEOの井上慎一氏の舵取りのもと、そして「空飛ぶ電車」の明確なビジョンのもとで着実に成長をされてきたわけです。

 こうして考えると、常識にとらわれたり、あるいは大勢に認められることを価値だと思ったりすることがいかに危険かに気付かされます。たまたま9月7日に大手ソフトウェア企業のSAPが開催したイベントで、まさにそのMMで執行役員・営業統括本部長・CCOを務める森井理博氏らデジタルマーケティングのプロたちの講演を聞く機会を得たのですが、三陽商会など旅行業界外のお話を含めて色々と勉強になりました。

 このような仕事をしていますと、読者の皆様の事業領域である旅行業にばかり目が行きがちで、どうしても知識も姿勢も「狭く深く」なっていきますが、折を見て外の空気を吸うことが重要だと痛感します。

 なお、今週のランキングでは、このほか「リアル」に関する記事も多くランクインしています。旅行業界において「リアル」といえば、一般的に「実店舗」を構える「リアルエージェント」のことと結びつけて考えられることが多く、その対極にはOTAが存在しますが、2位の記事では京浜急行電鉄が京急観光の店舗など旅行事業を日本旅行に譲渡することをお伝えしました。

 正直なところこれは時代の流れというか、ぎょっとするような驚きはなかったわけですが、一方では4位にエアアジア・グループがトラベルウエストとの提携のもと新宿に店舗を構えるというニュースが入り、時代の「ねじれ」というかリアルの「ゆらぎ」というか、なかなかこれまでには見られなかった動きが、ダイナミックに発露してきている印象です。

 また、間に挟まれた3位にはDeNAトラベルの「リアル」との向き合い方が入っており、これまた象徴的と感じます。なんとなく「店舗の未来は厳しい」というような見方が「常識」のようになっていますが、別の捉え方もあるのかもしれません。旅行業とはなにか、旅行業のリアルとはなにか、様々な角度から考え続けていきたいと思います。(松本)


▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2017年09月01日0時~09月08日13時)
第1位
ジェットスターP、関空2路線開設、ハノイ線初便はほぼ満席(17/09/04)

第2位
京急グ、京急観光の店舗事業など日本旅行に譲渡-業務提携も(17/09/03)

第3位
DeNAトラベル、イベント開催で差別化、新社長も「リアル」評価(17/09/04)

第4位
エアアジア、日本初の販売店舗を新宿に、福岡の第1種と提携(17/09/03)

第5位
ツアコンオブザイヤー、今年の大賞はHIS中田氏-EXPOで表彰(17/09/05)

第6位
日本航空、エアベルリンとのマイル提携停止へ-破産受け(17/09/05)

第7位
プリファード、地方ホテルの加盟に注力、訪日客の取込強化(17/09/06)

第8位
ツーリズムEXPO、過去最高の1310社が出展-「最大級の旅の祭典」に(17/09/07)

第9位
日本航空、メルボルン線の運航開始、成田発初便はほぼ満席(17/09/03)

第10位
日本航空、チャーター機内でVR実験、阪急交通社など協力(17/09/05)

※除外した記事(本来は10位以内にランクイン)
タイ/加熱式タバコ「アイコス」禁止条例について(17/09/01)