インバウンド婚は観光と婚礼の新成長市場に、JTB・バリューマネジメントらが可能性示唆

  • 2026年6月2日

 バリューマネジメントは5月27日、インバウンド婚(デスティネーションウエディング)をテーマとしたメディア向けセミナーを開催した。国内婚礼市場の縮小が続くなか、登壇者らは観光と婚礼を組み合わせた高付加価値旅行としての可能性を強調。地域経済への波及効果や文化資源活用による観光振興、今後の市場拡大に向けた課題などについて意見を交わした。

日本ブライダル文化振興協会 鈴木直樹氏

 セミナーでは、日本ブライダル文化振興協会専務理事の鈴木直樹氏が、国内婚礼市場は婚姻件数の減少や少人数化の進行により厳しい環境に置かれているとの認識を示した。その一方で、世界では海外で結婚式を挙げるデスティネーションウエディング市場が拡大しており、日本にとっても新たな成長機会になるとの見方を示した。

 鈴木氏は、インバウンド婚は一般的な訪日観光客と比較して消費単価が高く、参列者を含めた長期滞在につながることが特徴だと説明。日本の歴史や文化、食、景観といった観光資源との親和性も高い一方、宗教や文化の違いへの対応、海外市場への認知向上などが課題になると指摘した。

JTB 橘田ちひろ氏

 JTBの橘田ちひろ氏は、2025年の訪日外客数が過去最高を更新し、2030年には政府目標である6000万人、消費額15兆円に向けて市場拡大が続くとの見通しを紹介した。近年はモノ消費から体験消費へのシフトが進んでおり、その流れのなかで観光と婚礼を融合したウェディングツーリズムへの注目が高まっているという。

 橘田氏によると、デスティネーションウエディングは新郎新婦だけでなく家族や友人も訪問するため滞在期間が長く、宿泊、飲食、交通、観光、体験プログラムなど幅広い消費を生み出す。海外市場では体験価値を重視する傾向が強まっており、日本の四季や伝統文化、歴史的建造物、安全性やサービス品質などが競争力になると分析した。

ジャパンニューベネフィット 仁連一星氏

 続いて登壇したジャパンニューベネフィットの仁連一星代表理事は、2017年から鳥取県で取り組んできたインバウンド婚の実証事例を紹介した。香港市場を中心に展開し、2019年には年間125組を送客。人口減少地域においても十分に成立する観光モデルであると説明した。

 仁連氏は「結婚式だけを売らないことが重要」と強調。食、宿泊、文化体験、景観など地域全体を商品化し、地域事業者が連携して販売することが成功の鍵になると語った。また、旅行をきっかけに地域を知り、その土地で結婚式を希望するケースも増えており、通常の観光誘客が将来的なインバウンド婚需要につながる可能性も指摘した。

 バリューマネジメントの笠正太郎COOは、歴史的建造物の保存・利活用事業を展開する同社の強みを生かし、京都、大阪、神戸を中心とした関西エリアに加え、瀬戸内エリアでも事業拡大を進める方針を説明した。同社のインバウンド婚事業は2023年に本格始動し、2026年は問い合わせ150件、成約25件を目標に掲げる。今後は海外展示会への出展や専門組織の強化を通じて市場開拓を進める考えだ。

 登壇者らは、インバウンド婚は単なる婚礼需要ではなく、高付加価値旅行や地域創生につながる観光コンテンツであるとの認識で一致した。日本各地が持つ文化や歴史、景観を活用しながら、観光産業と婚礼産業が連携して市場形成を進められるかが今後の成長を左右しそうだ。