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百戦錬磨から独立、宿泊・賃貸・滞在を融合し新たな宿泊の選択肢を提供-リアテクノロジーズ代表 橋野宜恭氏

  • 2022年6月1日

 コロナ禍で厳しい状況に置かれている宿泊業だが、業績回復に向かっている企業もある。プロップテック(不動産×IT)のスタートアップ企業として、ホテルや民泊を長期滞在も可能なレジホ(レジデンシャルホテル)として運営するREAH Technologies(リアテクノロジーズ)は、需要回復のためにインバウンドからマーケットを拡大、運用技術を駆使することで21年から回復傾向にある。同社代表取締役の橋野宜恭氏に、現状や今後の展望を聞いた。

REAH Technologies代表取締役の橋野宜恭氏
-貴社の紹介をお願いします。

橋野宜恭氏(以下敬称略) 当社は不動産オーナーに代わり居住用不動産を滞在型のレジホ(レジデンシャルホテル)として運用しています。査定、許可取得支援から施設運営まで一気通貫でおこなうことで、不動産の収益最大化を図っています。

 背景としては、人口減少で賃貸不動産の空室率の上昇が見込まれ、生活様式も「住む」と「泊まる」の垣根が曖昧化しているなかで、住居とホテルは制度・法体系もオペレーターも別々。加えてプロップテック企業はエアビーアンドビーや宿泊予約サイトなどのプラットフォームが主流で、投資家であるオーナーの手残りを向上させる役割を担う人がおらず、それを当社がやっている形です。

 元々はSTAY JAPANというプラットフォームを運営する百戦錬磨で民泊の開業支援や運営をおこなう部門でしたが、2018年に分社化、独立しました。

-レジホとはどのような施設ですか。

橋野 レジデンシャルホテルは、海外ではサービスアパートメントと呼ばれています。日本ではサービスアパートメントという名称がまだ浸透していないため、当社は「レジホ」という略語で商標登録して運営しています。1泊1万5000円から2万5000円ぐらいの価格帯の広めの部屋で、「シティホテルに泊まるなら長期滞在用のレジホの方がお得」というニーズを開拓しています。建物の構造・住宅施設は住居そのもので、ホテルならではの特別な設備投資はしていません。

 コロナ禍前からDX化を進め、多くの施設でスタッフはほぼ無人です。チェックインもタブレットによる疑似対面方式で、条例に則り最低限の人員を配置している京都の施設でも、清掃、フロントなどの部門はなく、マルチタスク式で運営しています。

- 運用の仕組みを教えてください。
日割り家賃と宿泊料金の差で利益を出す(同社資料より)

橋野 レジホはマンションの日割り家賃と宿泊単価の差分で収益を出しています。賃貸不動産は「駅徒歩何分、築何年だといくら」と市場原理が働き、手残りを10%上げるのは大変です。一方でホテルはリスクが高くなる分、利回りも高い。例えば、大阪梅田駅のマンションの家賃は12万2000円、稼働率は96%(空室率4%)で手残りは11万7000円。レジホにすれば1泊1万2355円で稼働率75%、原価率45%の場合に手残りが15万5000円になるので利回りが1.3倍になる。大阪市内の家賃は東京都心部のおおむね半額ですが、宿泊代金は半額より高いので大阪は妙味があるわけです。

 コロナ禍前は当社利用客の9割近くを占めた外国人旅行客がいなくなり、生き残りのためハイブリッド運用も始めました。これは、1つの施設で、宿泊(2泊3日以上の特区民泊、1泊も可能な新法民泊)、賃貸、マンスリーマンションという複数の形態を組み合わせて収益を最大化を目指して運用するものです。

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