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海外医療通信2021年12月号 【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

  • 2022年1月4日

※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

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東京医科大学病院 渡航者医療センター

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海外医療通信 2021年12月号

海外感染症流行情報 2021年12月

(1)全世界:新型コロナウイルスの流行状況

新型コロナウイルスの感染者数は欧米諸国やアフリカで増加傾向にあります(WHO Corona virus disease 2021-12-21)。またアジアでは韓国やベトナムで感染者数の増加がみられています。こうした流行の再燃は、北半球での冬の到来やオミクロン株の発生が原因になっています。オミクロン株は11月にアフリカ南部から拡大し、12月下旬までに世界100か国以上で感染者が確認されています。今後、世界の流行は、デルタ株からオミクロン株に置き換わっていくものと予想されます。この新しい変異株は感染力が強いとともに、ワクチンの効果が減弱しており、予防のためには追加接種が必要です。
日本ではオミクロン株の発生にともない、11月末から水際対策が再び強化されました。流行国からの入国者については、検疫所の指定する施設で3日から10日の停留措置がとられます。また、入国後に感染者が発見された場合は、搭乗した航空機の乗客全員が濃厚接触者として健康監視を受けます。日本での水際対策の概要は下記のHPをご参照ください。なお、日本国内での感染例が12月下旬までに東京、大阪、京都、福岡などで確認されており、今後、国内でもオミクロン株の流行が拡大していくものと予想されます。水際対策に係る新たな措置について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

(2)全世界:季節性インフルエンザの流行

北半球温帯でのインフルエンザの流行は低いレベルですが、昨シーズンに比べると増加傾向にあります(WHO Influenza 2021-12-20)。ヨーロッパや北米ではA(H3N2)型が、東アジアではB型の流行がみられます。ヨーロッパではロシア、スウエーデン、トルコなどで患者が増加しており、バルカン半島のコソボでは急増しています(ECDC 2021-12-17)。米国では東部から中部にかけて患者数が増加している模様です(CDC Flu view 2021-12-11)。

(3)アジア:中国で鳥インフルエンザ患者の発生続く

今年は中国でH5N6型の鳥インフルエンザ患者が多発しており、最近1ヶ月間でも5人の患者が確認されました(Outbreak News Today 2021-12-8, 15)。患者の発生は湖南省で多く、いずれも重症です。2014年以来の患者総数は57人で、このうち31人が今年の発生となっています。

(4)アジア:南アジアでの蚊媒介感染症の流行

インド北部のウッタル・プラデーシュ州で10月からジカ熱の流行があり、2000人以上の患者が発生しました。米国CDCはレベル2の注意喚起を出しています(CDC 2021-12-9)。また、同州に隣接するデリー周辺でも11月末にジカ熱の患者が確認されました(英国Fit For Travel 2021-12-14)。デリー周辺でのジカ熱患者の確認は今回が初めてです。インド南部のケララ州でもジカ熱の患者発生が続いています。一方、パキスタンでは11月下旬までに約5万人のデング熱患者が発生しており、183人が死亡しました(WHO 2021-12-14)。患者発生は首都イスラマバードのあるパンジャーブ州で多くなっています。

(5)アフリカ:西アフリカなどでの黄熱の流行

アフリカ西部から中部にかけて、10月から黄熱の流行が拡大しています(WHO 2021-12-23)。ガーナでは北部を中心に、11月までに200人以上の患者(疑い含む)が発生しています(WHO 2021-12-1)。コートジボアールでは首都アビジャン近郊でも患者が発生しており、都市型流行になることも懸念されています(WHO 2021-12-23)。ナイジェリアでは全土で1500人以上の患者(疑い含む)が発生している模様です(英国渡航医学センター NaTHNac 2021-12-17)。アフリカの赤道周辺諸国に滞在する際は、黄熱ワクチンの接種を必ず受けるようにしましょう。

(6)アフリカ:コンゴでのエボラ出血熱の流行が終息

WHOは12月16日に、コンゴ民主共和国の北東部で発生していたエボラ出血熱の流行が終息したことを宣言しました(WHO 2021-12-16)。10月に始まった流行で、11人の患者が発生し9人が死亡しました。

日本国内での輸入感染症の発生状況(2021年11月8日~2021年12月12日)

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査2021年 (niid.go.jp)を参考に作成しました。新型コロナウイルス感染症の輸入例については、厚労省発表の検疫実績(2021年12月24日)000872777.pdf (mhlw.go.jp)を参考にしています。
(1)経口感染症:輸入例としてはアメーバ赤痢が4人発生しました。
(2)昆虫が媒介する感染症:マラリアが1人(ナイジェリアで感染)、デング熱が1人(バングラデシュで感染)でした。デング熱は今年の累計数が7人で、2019年の461人、2020年の43人から大きく減少しました。
(3)新型コロナウイルス感染症:2021年11月14日~12月11日までに248人が輸入例として報告されており、前月(183人)に比べて増加しました。このうち外国籍者は115人でした。感染者の滞在国で多かったのは、米国48人(外国籍22人)、英国25人(外国籍3人)、フランス21人(外国籍3人)、ネパール21人(外国籍20人)、韓国9人、パキスタン8人、フィリピン7人でした。
(4)その他の感染症:麻疹の輸入例が1人(パキスタンで感染)発生しました。

今月の海外医療トピックス

HIV感染症の昔と今
先日、遅ればせながら2018年公開の映画「ボヘミアンラプソディー」を観ました。1970年代から世界で人気となったUKロックバンド,クイーンのフレディマーキュリーの生涯を、耳慣れた曲と共に興味深く鑑賞しました。フレディはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染し,1991年に45歳の若さでこの世を去りました。それは、未知の感染症HIVに対する偏見や差別が問題となっていた時代でした。彼の死後30年が経った現在、HIVの根治は難しいものの、予防策が確立され、早期発見と治療で日常生活を継続できるようになりました。しかし、2020年時点で世界には約3770万人のHIV感染者がおり,毎年新規感染者は約150万人, 死亡者は約68万人もいます。日本も1985年以降、年々感染者が増え、2019年には累積感染者数が3万人を超えました。最近はHIVに対する社会的関心の低下、さらに新型コロナの影響で、HIV感染予防策の基本である保健所での検査や相談数が減少しているそうです。感染者の受診遅れが、感染拡大や治療遅れに繋がることが心配されています。感染症と社会的関心を改めて考えることができるこの映画、年末年始のおうち時間にお勧めです。(助教 栗田直)
参考 https://www.niid.go.jp/niid/ja/aids-m/aids-iasrtpc/10712-500t.html 

渡航者医療センターからのお知らせ

黄熱ワクチンの接種が毎日受けられます
当センターの黄熱ワクチン接種日が月曜日から金曜日までに拡大されました。また、従来は問診日と接種日が別でしたが、同日に受けることができます。黄熱以外のワクチンの同時接種も可能です。詳細は当センターのホームページをご覧ください。黄熱ワクチン|渡航者医療センター|診療部門案内|東京医科大学病院 (tokyo-med.ac.jp)