ツーウェツーリズム時代における関空の強みとは?-ツーリズムEXPO

インバウンド4000万人時代にアウトバウンドの商機は
バランス良い東南アジア、欧州に可能性も

東南アジアがツーウェイの理想形に、ミャンマーで取組事例も

 基調講演の後は、関西経済連合会理事・国際部長アジアビジネス創出プラットフォーム管轄の井上剛志氏、AY日本支社長の永原範昭氏、JTB執行役員個人事業本部海外仕入商品事業部長の遠藤修一氏の3名をパネリストに迎え、パネルディスカッションがおこなわれた。モデレーターは、JTB総合研究所研究理事の黒須宏志氏。

井上剛志氏

 パネルディスカッションの冒頭、黒須氏は「“ツーウェイツーリズムの時代”というと聞こえが良いが、必ずしも夢の時代ではない。むしろチャレンジングな時代である」と語った。「今はアウトバウンドよりもインバウンドが圧倒的に多い。このような状況の中でアウトバウンドを盛り上げるには、インバウンドの動きを理解したうえで新しい海外旅行ビジネスのやり方を考えていくことが大事」と説明。パネルディスカッションで「ツーウェイツーリズム」の戦略を具体的に掘り下げていきたいと、黒須氏は述べた。

 黒須氏はまず、日本人の海外旅行者数が2019年9月までの12ヶ月で2000万人を超えていることを紹介。そのうえで、その背景としてインバウンドの急激な増加により国際線定期便の座席数が大きく増加し、それによってアウトバウンドでも販売可能な座席が増えたと分析した。日本発着の国際線定期便座席数は2000年から2019年で約2倍に増えているという。そして、関空のインバウンド需要は成田空港を既に超える規模であり、今後もさらに伸びる余地があることから、そこにアウトバウンド伸長の可能性があるとの考えだ。

このような状況において黒須氏は、特にアウトバウンドが伸びる可能性があるのは東南アジアであると分析。2025年までのインバウンドとアウトバウンドの旅客数を方面別に予測したデータで、東南アジアは比率がほぼ同じであるといい、デスティネーション開発や新たな路線誘致などによって「ツーウェイツーリズムの理想形」になる得るとの考えで、ディスカッションでは特にミャンマーの可能性が議論された。

遠藤修一氏

 関西経済連合会で井上氏が管轄するのは、同連合会がアジア7ヶ国の経済団体と協力して各国企業間における人材や技術、サービスの連携とそれによるビジネスの創出をめざす「アジアビジネス創出プラットフォーム」。そのプロジェクトのなかで、双方向の交流人口拡大にも取り組んでおり、アウトバウンド振興の新たなデスティネーションとして焦点を当てたのがミャンマーだったという。

 2011年の民主化をきっかけにミャンマーの旅行事情は大きく変わり、民主化以前の2010年には年間80万人だった訪問者数が2017年には4倍強の340万人へ増加。日本人訪問者数は10万人に留まるものの、「ミャンマーは観光資源の潜在需要が高く、ビザの免除制度が延長され、日系企業の進出数が増えたことでビジネス旅客の拡大も見込める」ことから、井上氏は「引き続き数字を更新していきたい」と意欲的。活動例では、この10月に日本アセアンセンターとASEAN観光投資セミナーを開催したほか、「関経連ASEAN使節団」の派遣なども予定している。

 またJTBの遠藤修一氏も、ミャンマーについて「以前から力を入れている」と説明。13年にミャンマー支店「JTB Polestar Co.Ltd.」を立ち上げたこと、メディアとコラボした商品「おじゃましミャンマー」、「LAPITA」を通じた日本企業のグローバルビジネスサポートについて紹介した。