専門性で生き残る:アフリカ旅行の道祖神

同好会のように設立、社員の興味を商品化
「小さな一流会社」めざして50周年へ

-ツアーの安全確保についてはどのような取り組みをされていますか

情報誌を年6回発行するほか、説明会や相談会、カルチャー講座なども活発に開催 菊地 ニーズがあればどんな場所でも商品化するわけではなく、外務省の海外安全情報でレベル3以上に指定されている地域は、自主規制している。例えばソマリアなどのように、そこに居るだけで緊張感が走るような土地を旅しても面白くはないだろうし、危険な場所や社員が行ったことのない場所は商品化しない。安全性には万全を期して、お客様にも信頼をいただいているが、そもそもアフリカはお客様と旅行会社の間に信頼関係がないとツアーが成り立たない土地だ。

-近年のOTAの台頭をどう見ていますか

菊地 OTAはアフリカでも増えているし、今後も増えると思うが、トラブルも多い。例えば空港に出迎えのスタッフが来ない、ホテルがオーバーブッキングで泊まれない、機器の故障で予約の確認ができないといったことが頻発していて、当社が現地に駐在員を置くことにこだわる理由は、こういったところにも起因している。

 従来型の旅行会社の役割は縮小傾向にあるのかもしれないが、確実なお客様対応ができる点で、我々はOTAに勝っている。アフリカ旅行においてはどんなにインターネットが普及しても、現地を知り尽くした旅行会社の役割は廃れないと思う。

-アフリカ旅行を扱う魅力とリスクについて教えてください

菊地 アフリカ大陸では経済発展が続いているが、ケニア、タンザニア、ナミビア、ボツワナ、南アフリカなどを除けば、どこも観光産業の発展はこれからだ。だからこそ道祖神の専門性は際立つし、自然に本当のアフリカ好きが集まり、現地で多少の問題があろうと収益は維持できる。また、観光地として成熟していないからこその面白さ、と言える部分もあると思う。

 もっとも、アフリカならではのリスクもあり、現在コンゴで流行しているエボラがケニアに飛び火するようなことがあれば、我々も立ち行かなくなる可能性がある。また、大手の旅行会社がケニアのサファリを扱わなくなったことによって、アフリカ旅行市場の需要が全体的に縮小し、当社も取扱高が落ちたことがあった。アフリカは、デスティネーションとしての可能性とリスクの間で、バランスを取るのが難しいのも事実だ。

-今後の展望をお聞かせください

菊地 大きな会社にするのではなく、「小さな一流会社」をめざしているので、大幅に社員を増やしたり、上場したりということはないだろう。アフリカが好きな人に「1歩先のアフリカ」を紹介してあげられる会社であればいいと思っている。

-事業承継に関する考えもお聞かせください

菊地 道祖神の社員は真のアフリカ好きで、お客様のニーズにも応えており、そういう意味ではみな合格だが、会社を継ぎたいかというと話は別らしい(笑)。私も社長になって10年が経ち、リタイアの時期も近づいているが、いずれにせよ道祖神としては50周年に向けて走っていくつもりだ。

-ありがとうございました