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ガストロノミーツーリズムで地域振興を-EXPO国内観光シンポ

「日本には成功の要素が揃っている」
地域の関係者と協力し、魅力の発掘と発信を

各地域に個性あふれる食文化が
「すべての旅はガストロノミーに通じる」

ぐるなび社長の久保氏  続くパネルディスカッションでは、ぺルドモ氏を含む5名のパネリストが登壇し、それぞれ地域活性化に向けた考えや取り組みを紹介。ぐるなび代表取締役社長の久保征一郎氏は「これからの旅行者は地域固有のオリジナリティーをめざして動く。そして各地域には必ず、オリジナリティとなる食がある」との見方を示した上で、「誰でも1日3度の食事をする。つまりすべての旅はガストロノミーに通じる」と述べ、食と観光が密接な関係にあることを強調した。

 現在の日本におけるガストロノミーツーリズムを取り巻く環境については「依然としてガストロノミーツーリズムという言葉の認知度が低い」と指摘。「お金持ちによる美食のイメージがあるが、本来は固有の食文化を理解して体験すること」と説明し、ガストロノミーツーリズムの敷居は低いことを強調した。また「すべての地域に存在するコンテンツである食や食文化を発掘して磨き上げ、継続して情報発信していくこと」が肝要と主張した上で、その活動をぐるなびがバックアップする用意があることをアピールした。

新潟市長の篠田氏  新潟市長の篠田昭氏は行政の立場から同市の取り組みを紹介。消費者と生産者と料理人を結びつけて日本の食文化を発信する試み「ピースキッチン新潟運動」を実施したことや、ウィラーグループが所有する「レストランバス」を日本では初めて同市で運行したことなどをアピールしたほか、子供を対象に食育や農業体験に関する取り組みを実施していることも説明した。

 また、さまざまな企業や生産者、料理人に加えて「Negicco」や「NGT48」など新潟県を拠点に活動するアイドルグループなどとも協働し、多面的に食文化と農業と観光の融合を進めていることも強調。「新潟市は食と農と文化のまち、と市民が言うような市にしたい」と意欲を示した。

富久千代酒造社長の飯盛氏  佐賀県鹿島市の冨久千代酒造で社長兼杜氏を務める飯盛直喜氏は、九州の日本酒業界を取り巻く状況が厳しさを増すなか、11年に同社の「鍋島」がロンドンのワイン品評会「インターナショナルワインチャレンジ」の日本酒部門で優勝したことを機に、市内の酒蔵6軒で「鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会」を設立したことを説明。翌12年には初めての日本酒イベントを開催して人口3万人の市に3万人の観光客を集め、「みんなが自信と笑顔を得た」と伝えた。今年3月に実施した第5回のイベントについては7万5000人を集めたという。

 今後の同協議会の活動については、第4回から参加している嬉野市の酒蔵との協力関係を強化するとともに、有明海の海産物を使用した料理や有田焼などもあわせて訴求し、他地域との差別化をはかる方針。長期的なビジョンとしては「安売りはせず、日本で認められてから世界をめざす」とビジョンを示し、短期的な活動としては「酒蔵の思いが伝わるよう、パンフレットの制作などにも少しずつ取り組む」と語った。