新春トップインタビュー:観光庁長官 田村明比古氏

訪日旅行は「次元の違うステージ」へ
海外旅行にも「一定のウェイト」

─ツーウェイツーリズムに対する考えは。海外旅行は今後、どの程度の回復や成長が見込めますか

田村 海外や国内を問わず、旅行にはいくつかの要素が影響する。まずはある程度の経済的余裕や将来への安心があること。そして為替の問題などもあるが、交通手段も含めた旅行費用が「お値打ち」でなければ、マスの部分は増えない。もう1つは安全の確保だ。いずれも難しい問題だが、所得水準については政府を挙げて、旅行費用については国交省中心に、安全については各国が協力して頑張るしかない。

 人口が減少し高齢者が増えていく時代であることを考えれば、かつてのような出国者数の爆発的な増加は望めないが、伸びしろはあると思う。マスの部分については近隣国が中心となるので、おこなうべきことは明確だ。それ以外のエリアについても、直行便が就航し、それが廉価で利用できるといった要素などで人の流れは大きく変わってくる。

 また、訪日や国内と同様に、海外旅行についても正確な情報発信が必要だ。先般のパリでの事件などテロに関する問題は難しいが、案件によってはその国の全域が危ないとの印象を持たれてしまう。外務省が先ごろ、表現の一部を変更した「海外渡航情報」についても、行き過ぎた表現などがあるようなら意見を言わなくてはいけないと思う。


─旅行会社からは訪日や国内に限らず、海外旅行に対する支援も求める声が挙がっています

田村 日本の旅行業界は海外旅行への依存度が高く、その体質はここ10数年においても変わっていないが、やはり変化は必要だ。どんな国でも外貨の獲得は重要で、インバウンドが観光政策の柱になっていない国はない。行政としては、訪日旅行についても旅行会社がビジネスをしやすい環境を、例えば着地型商品を訪日外国人旅行者に売りやすいような、または良質のランドオペレーターが育つような環境を、整備していかなくてはと考えている。

 とはいえ安全保障や友好関係の深化などの観点からも双方向交流は大事なので、海外旅行にも一定のウェイトを置いて取り組む。先日の日中韓観光大臣会合や、インドネシアへの官民による訪問団の派遣などは、継続しておこなわなくてはいけないと考えている。

 燃油サーチャージについては航空局長を務めていた昨年の年初に、少しばかり制度を改革した。日系2社について言えば、為替とケロシン価格が一定の水準を超えればゼロになる、透明性の高い予測可能な仕組みに変更している。「原油価格が下がっているので撤廃を」という意見も聞くが、まずはしばらく様子を見てみるべきではないだろうか。さらなる問題が生じるようなら、改めて航空局と意見を交換しなくてはならない。


─ありがとうございました