インタビュー:ジャッツ東京ツアーコンダクターセンターの浦和愛子氏

-添乗員に求められるものは何だと思いますか

浦和 3つあると思います。1つはやはり危機管理能力。私は「嵐を呼ぶ女」と自称しているくらい、色々な目に遭っておりまして、9.11の時もカナダにいました。そうした経験からわかったことは、危機管理能力の重要性です。事故や事件、自然災害などの時は、常に最悪のケースを想定してこういう手を打とうと考えています。

 2つ目は情報収集能力です。今はお客様から「インターネットでこのレストランが良いと書いてあるので予約を取ってください」と要望があります。インターネットの情報はすべてが正しいとは限らないので、情報収集能力と、それをお客様に上手く伝えられるかが大切ですね。

 3つ目はコミュニケーション能力とプレゼンテーション能力。語学も必要ですが、日本語でいかにお客様にさまざまなことを伝えられるか、理解していただくかです。

 9.11の時は、それまでの募集型企画旅行の契約が打ち切られて手配旅行契約に変わり、順次お客様をご希望のフライトで日本にお返しすることが主な仕事でした。バンクーバーでフライトを待っている間、お客様自身は元気なのですが、バスは空港へ向かうために使われているので、観光バスの手配ができない状態でした。このため、公営バスなどで少し郊外にある山にハイキングに行くなど、お客様のケアを続けながら、航空券の手配をおこないました。

 今はスマートフォンの時代なので、お客様が簡単に情報を収集できます。2011年のアイスランド噴火の時、お客様は私が言うよりも前にスマートフォンを見て「明日もう飛べますよね」と尋ねてくる。実際に飛行機に乗るまで出発するかわからないので、「ハイ飛べます」とは言えません。今はお客様に全部情報を差し上げることが多くなっていると思いますが、飛べるはずが飛べなくなるといったように、反対になった時は問題になってしまう。情報収集の後の管理能力が求められますし、そうした塩梅はすごく難しいと感じました。


-旅行者のニーズが多様化するなか、添乗員として気をつけていることは

浦和 昔は、国内でも海外でも、旗を持った添乗員にお客様が右向け右で全部ついてきてくれました。今は、多様なニーズを持ったお客様が多いので、添乗員はホテルのコンシェルジュやコーディネーターのような役割を求められていると思います。ツアーに対する要望、希望がそれぞれ本当にさまざまなので、それをうまく調整、コーディネートしてあげる能力が必要です。

 例えば、第2ブランドのツアーだと、都市の中心部からホテルが少し遠くなることもあります。そうした時、中心部までバスなどの公共交通機関で行ったら時間もかかる、でもタクシーよりも値段が安い。そうした時、ツアーのお客様2組くらいで朝に待ち合わせして、タクシーで移動の時だけ一緒に行ってもらう。そういうコーディネートする力が求められていると思います。


-店舗でツアーの販売促進も担当されているとのことですが

浦和 2008年に開業した、日本旅行新宿支店ヨーロッパプラザの立ち上げに関わり、現在も店舗での説明会など販促活動に携わっています。店舗自体が「毎日添乗員のいるお店」というコンセプトなので、立ち上げ時に添乗員のチームリーダーを担当しました。

 新宿のビルの4階にある小さなワンフロアですが、開店当初から店舗スタッフとの協力し、販売促進に携わり、1日の欧州ツアーの総販売額1600万円を達成しました。自分もスタッフもヨーロッパエキスパートという社内資格を取り、一生懸命頑張っています。

 店舗では他社の商品も扱っていますが、その時に感じるのは確かな商品力の必要性。旅行は行って見なければ分かりません。車は店で試乗できますが、旅はそれができない。ですので、他社商品をお勧めする時も、確かな商品力があり、予約後のフォローなど対応がしっかりしていて、まず間違いないところをお勧めしています。

 また、ヨーロッパプラザでは、お客様に商品を案内する以外に、1日3回、1時間半程度各方面の説明会をおこなっています。立ち上げ当初は1日4時間半話す機会がありました。このため、発声や朗読の勉強をしようと思い、アナウンススクールに通いました。こうした経験から、今は講師として1日お話する機会もありますが、難なくこなせるようになってきました。