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アジア太平洋地域は成長市場、LCCとの差別化など課題も-AAPA社長会

  • 2015年1月15日

LCCと競争激化、差別化と「覚悟が必要」

GA社長兼最高経営責任者のエミルシャ・サタル氏  航空業界で台頭するLCCへの対応について、バランタイン氏の問いかけには、さまざまな選択肢を提供することが航空会社の役割であり、FSCも選択肢の1つであり続けるとの矜持が示された。

 LCCの台頭が著しいマレーシアで厳しい競争を強いられているMHのジャウハリ氏は「価値判断をする消費者に対し、われわれは選択肢を示すことこそが重要であり、FSCとしてどこまで幅広い選択肢を提供できるかが問われている」と指摘。CXのホッグ氏は、アジア太平洋地域のLCCは欧米とはまったく異なる発展の道をたどっており、巨大な力を持ったLCCが台頭してきているとの認識を示した上で「FSCとして厳しく長い競争になっていく覚悟が必要」と語った。

 インドネシアではLCCのライオン・エア(JT)がシェアを拡大しており、FSCのGAは対抗策としてグループ内にLCCのシティリンク(QG)を設立している。この点についてGAのサタル氏は「LCCはデマンドに合わせて柔軟に運賃をコントロールできることが強み。グループとしてプレミアムトラベラーはFSCのGA、バジェットトラベラーはLCCという両面作戦で2つの市場を取り込んでいく」とし、今後もQG用の機材購入のため積極的に投資していく方針を示した。


インフラ整備と一体で成長を

モデレーターを務めたトム・バランタイン氏  パネルディスカッションでは、各国の航空当局や空港などと一体となり、地域間競争を勝ち抜いていく必要があるとの見解が各社から示された。

 GAのサタル氏は、香港やシンガポール、マレーシアには国際的な競争力の高い空港が存在し、そこを本拠とする航空会社の優位性を確保していると指摘。インドネシアでも規制緩和により民間企業が空港運営に関わることが可能になったことなどを挙げ、競争力の高い空港がインドネシアに現れることに期待を託すと語った。GAはジャカルタのスカルノ・ハッタ空港における混雑緩和のため毎年巨額の投資をしており、空港インフラが拡充すればこうしたコストも不要となり、航空会社の競争力向上にもつながるとの見解だ。

 MHのジャウハリ氏は「クアラルンプール国際空港は3番目の滑走路も建設され、ターミナルも拡充されるなど、競争力が高まっている」と空港環境が良好であることを利点として挙げた。同氏によると、マレーシア政府も空港関連の拡充に予算を割いており、マレーシア全土で空港整備が進んでいるという。

 最後に、GA、MH、CXの3社がそれぞれ、今後の経営戦略のポイントに言及。GAのサタル氏は「成長し続ける市場に見合った積極的なインフラ投資を継続していく」と明言し、成長戦略に自信をみせた。MHのジャウハリ氏は相次ぐ航空機事故による信頼失墜の影響を踏まえ「2015年はチャレンジの年となるが、信頼回復を果たしていきたい」と決意を述べた。CXのホッグ氏はFSCとして成長するには「カスタマー・エクスペリエンスの向上への努力を継続していくことが欠かせない」との考えを示した。



取材:高岸洋行