オンライン旅行会社台頭で法規制の見直しを-JATA経営フォーラム

  • 2013年3月7日

豪州は新たな旅行産業の枠組み創出へ、ライセンス制度の見直しも

玉川大学経営学部観光経営学科教授の野村尚司氏  一方、野村氏は「旅行会社を取り巻く法的環境の変化」と題して、豪州の事例を紹介した。豪州では旅行業界主導の新たな枠組み作りをめざすための「旅行産業移行計画(TITP)」を策定。政府が認可する旅行業ライセンス制度の見直しや、日本の営業保証金と同様のシステムであるTCF(Travel Compensation Fond)の拠出金撤廃に向けた取り組みが進んでいる。

 豪州は日本と旅行業を取り巻く環境が似ており、グローバル化の中で共通の悩みや問題が多い。OTAの台頭やサプライヤーの直販化で顧客獲得競争が激化する中、豪州旅行業協会は、外国法人にTCFが義務付けられていないことから、豪州の旅行会社がコスト面で劣勢にあると指摘。また、消費者保護の観点からみても、消費者は旅行保険や決済まで猶予期間があるクレジットカード利用などで既に多重に守られていると主張し、政府に意見書を提出した。

 これに対し、政府は大手コンサル会社、プライスウォーターハウスクーパースに「旅行業法の現状認識とあるべき姿」について中立的な立場での調査を依頼。結果は「国主導の枠組みから業界による認証へ移行すること」「現状の旅行業者破綻に対する公的保険制度を見直し、業界・自治体による新たな構築が望ましい」という、豪州旅行業協会の提言と一致する内容が多かったという。

 こうした状況を踏まえ、2012年12月に政府は「旅行産業移行計画(TITP)」を認可。豪州旅行業協会ではワーキンググループを発足し、今後約3年かけて新しい枠組みへの移行をめざしていく考えだ。