KNT、「営業部隊の本社」の創発本部、エンジン役として4780億円必達を

  • 2008年1月22日
 近畿日本ツーリストは先ごろ実施した組織改正のうち、旅行事業創発本部の役割について「営業部隊の本社」(KNT常務取締役旅行事業創発本部長の越智良典氏)で、KNTの旅行事業の売上目標 4780億円、このうち国内2880億円、海外1715億円、国際90億円、商事など95億円が必達目標とした。越智氏は、「低成長の市場環境においてメイトは昨年5%増、海外旅行は0.2%減となり、このうちホリデイは3%減と逆風の環境の中ではまずまず」と昨年を振り返ったが、市場はさまざまな方向に分散、多様化する中、事業横断的な取り組みが増えると想定される環境において、蓄積のある国内・海外・国際をエンジン役として改めて位置づけ、主力の旅行事業の再生、活性化をはかる。

 創発本部が営業の本社機能を果たす重要性から、今回の組織改正で管理部門は250名から200名へと削減したものの、人員は減らさず811名と規模を維持。個人に対して、メイト、ホリデイのパッケージ商品の販売とともに、小規模化した団体の取り込みも強化し、旧来型のビジネスの再生を目指す。その一方、地域活性化で着目されるニューツーリズム、チャーター、富裕層への取り組みなど、裾野が広がる市場への対応についても創発本部で取り組む。このうち、海外旅行は「中部で既に仕入れ、企画を一体的に動かしていた」ことから、中部営業本部から杉井健二氏(執行役員海外旅行部長)を起用し、逆風の中で「2007年実績の維持」を必達として取り組む。海外は特に、仕入れた座席、客室を売り切ることが大きな課題。KNTでは、ホリデイでの仕入れを返却することもあったことを率直に認めつつ、団体の小規模化に対応し、店舗で小規模グループの取扱いをメイト、ホリデイに誘導しながら、消化率をあげていく。この利点として、営業人員が小規模団体への対応が効率化できることから、本来の営業活動への注力が可能となり、営業効率の向上もねらう。

 また、韓国のハナツアーとの提携では、日本から韓国へのアウトバウンド、韓国から日本へのインバウンド以外にも、韓国発ハワイ需要への対応なども検討する必要があり、こうした視点から、従来の営業本部で対応しきれない新たな分野の取り組みについても積極的に対応できるという。


▽仕入れ力の維持、再拡大への道筋をつける役割−自立めざし、全国で「尖ったかたちを」

 創発本部の大きなポイントは、仕入れと企画を一体化したこと。仕入れ環境は、海外では世界の旅行需要が活性化しており、日本の仕入れがグローバル化の時代に合わない、とこの数年、指摘されてきたところ。KNTではハワイやグアム、サイパンは豊富な仕入れ、在庫を持つというが、欧米はイールド志向が強く、どのように高く販売するかという視点から厳しい対応が迫られている。その一方、オセアニアは定期便の減少などを受け、総座席数が減少し、アジアはファミリーから若年層まで幅広い世代に対応できる価格、仕入れ、かつサプライヤー側も対応は一律ではない。こうした仕入れ環境から、ハワイやミクロネシアの仕入れ力を活かし、この地域で先行して「消化率を高める」ための施策を展開していく。例えば、4人から5人程度の小規模グループのホリデイへの誘導も策のひとつだが、こうした策が成功すれば、他の地域への展開にも広げていく考えもあるという。

 一方、インターネット旅行会社の台頭で大きな課題となるのは国内の旅館の在庫、手数料だが、「企画側の考えだけでは、売れるところに注力していく」という志向になるが、「話し合いを持ち、旅館側の経営の考え方も考慮し、企画につなげていく」ことが重要な役割となる。特に、国内は仕入拠点をほぼ倍増となる25ヶ所として、地域密着度を高めただけに、商事事業とともに、旅館側の考え方をどれだけ聞き出し、仕入れ、企画を通じて商品、販売で送客に結び付けていくかが問われる。

 国内、海外とも、仕入れ環境は厳しい状況下にあり、本社機能としての創発本部は提携販売、イベント・コンベンション・コングレス、団体旅行、国際旅行、eビジネスの各事業カンパニーとの連携、リテール専業会社のKNTツーリストとの連携も消化率の向上という点では鍵をにぎる。このうちKNTツーリストとは「既にリテール専業ということから、さまざまなアプローチがあると聞く。100%子会社であるが、別会社として良い緊張関係を保ち、これまで以上の提案をしていく」(越智氏)と語るあたりにも、不退転の決意が伺える。

 MICEの成長セグメント、教育旅行を中心として学校の差別化が進む中での団体旅行のソリューション営業など、出口となる各カンパニーが消費者ニーズにきっちりと応える形となり、「全国で尖ったかたちが出てくる」(越智氏)ことで、営業部隊の本社が仕入れと企画が一体化した強みを最大限に発揮し、全体が連携した自立に向け歩みだす。越智氏は「1年から2年で理想形」と語ったが、新たな形で成果に結びつける時間はあまりない。(鈴木)