ジャルパック梶社長、旅行業主導で「第2の開国」、出国率30%に向けた提言

  • 2006年9月22日
 JATA国際観光会議の基調講演でジャルパックの梶社長は、日本人の出国率30%を目標とすべきと提案、具体策を示しながら、日本市場の成長性、未来像を語った。現在の日本人の出国率は13%ほどで、約1740万人。梶氏が語った30%の出国率が実現すると、3600万人の出国者数となる。これを旅行業界が主導する「第2の開国」と位置づけ、物理的、心理的な開国をしていく必要があることを呼びかけた。

 日本の出国率は台湾の34.5%、ニュージーランドの44.7%、イギリスの108.3%などと比較して低い。伸び悩みの要因について梶氏はSARS、反日問題、津波、地震などで近々のところは伸び悩みがあること、さらに言語のハードルなどがある。

 こうした中で、出国率を伸ばしていくための対策として3つ、時間、お金、旅行意欲の観点から具体案を提言。まず、時間では完全週休2日制が浸透しているが、この23日が祝日であるが土曜日であるが、こうした場合に、月曜日に振り替え休日を作ることを提言。さらに、実際に海外旅行に結びつける策として、IT運賃で、土曜日、日曜日に限り1泊2日の旅程での出国を可能とすること。これにより、近隣諸国への海外旅行需要の喚起につなげたい考え。梶氏は福岡から、船舶「ビートル」を利用して1泊2日も可能で、国内旅行の感覚で参加することが可能であること、さらに土曜日の日本発、日曜日の日本着の航空座席に余裕があることも指摘しながら、実現性に向けた道筋を示した。

 金銭面では20代の出国率の低さを例に引き、高校、中学校だけでなく小学校の修学旅行から海外での文化交流を促進することを指摘。さらに、若年層の旅行促進で旅行資金の融通、いわゆるローン的なスキームの構築を提案。特に、就職が決まっている学生に対しては、就職前に海外の各地を時間をかけてめぐり、その費用は就職後の給与から払うスキームにより、若年層の出国率低下に歯止めをかける策を披露した。

 さらに旅行への意欲については初めての海外旅行者を増やすことが課題。例えば、パスポート発行制度が現状ではハードルが高い。アメリカでは郵便局や公立図書館で7000ヶ所の申請箇所だが、日本は申請事務所が全国で328ヶ所を数える程度。梶氏は申請箇所の増設に加え、取得費用の引き下げ、さらに将来的な考えとしてパスポートをIDとして使用することで、海外への障壁を少しでも低くすることも提案。
 資金面では余裕のあるシニア層に対し、定年後の生活に旅行を組み込む「ライフサイクル・トラベルプラン」として、顧客に10年から20年の期間に60歳以降に年2回のペースであらかじめ旅行を提案。旅そのものを生活に組み込むだけでなく、旅行先として訪れることのできる回数が限られていることが逆に明確になり、質の高い旅行の提案にもつながる可能性がある。