旅行業の人材育成と雇用、まずは雇用難時代の認識が必要

  • 2006年2月22日
 日本旅行業協会(JATA)は厚生労働省からの受託調査として高齢者の雇用推進と若年者の育成を目指す旅行業における「日本型デュアルシステム」事業を受託、このほどその一部を「旅行業経営分析」で報告した。JATAでは1月に会員企業を対象とした従業員に関するアンケートを実施。これによると従業員の採用時期は正社員では40%超が「4月定期採用」と回答したものの、「必要なときに不定期に採用」も50%を超え、契約社員については80%超となり、正社員、契約社員などのバランスが、以前とは異なってきている様子が伺える。
 また、従業員の学歴だが、正社員の採用条件で「学歴不問」は3割ほどに留まっている。正社員には将来の幹部候補生でもあることから大卒程度の学力を求めているが、現場の即戦力となる契約社員は学歴を問わないというものが、半数を超え、人物本位志向だ。また、近年では観光学部・観光学科の増設が国立大学にも及んでいるが、こうした大学の採用については10%程度を超えるほどで、旅行・観光に関する教育が旅行会社の就職に優位にならない結果となっている。

 社員教育では、新入社員についてはOJTが最も多く70%を超えたほか、集合教育が50%超、また内定者をアルバイトとして採用し、実務経験を積ませることも35%超と多い事例である。また、近年は異業種でもインターンによる採用が増えているが、受け入れた実績があるという回答は39%で、内訳は大学生や旅行・観光・ホテル専門学校生が大半。ただし、大学生は観光学部・観光学科の学校ではない。ただし、受け入れ実績のある約4割の企業のうち、約4割がインターンから採用するなど成果の一端も見えているという。
 また、人材育成では「期待通りの成果」という回答は4社に1社程度で、7割超が「期待通りに行かない」という考えも示しており、その理由としてスキルや知識を現場で応用しきれていない、あるいは自分でスキルアップする努力をしていないという回答が寄せられている。

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 旅行業では90年代に50代を迎える社員がバブル崩壊などで経営環境が悪化する中、人件費の負担増が顕著となり、その後、契約社員をはじめとする非正規従業員の制度を導入。人件費の流動化を図るが、テロ、SARSなど業界環境が一段と悪化を辿る中で、経営としては契約社員等の非正規従業員・派遣社員の削減、賞与や賃金の削減で収益悪化に対応。こうした中で、これから就職する若者らは「旅行会社は不安定な職場」との認識を醸成した。
 今後、少子化が本格化し、2007年問題で大量の退職者が旅行業界からも出ると想定されるが、その中で若者に対する旅行業のイメージ悪化は採用難にいっそうの拍車をかける懸念もある。業界全体で優秀な人材の育成と共に、観光関連の研鑽を積んだ若者をはじめ、人材確保に向けた取り組みが必要という課題認識も必要になっている。