二重価格で、市民の足は軽くなるのか?東山に暮らして見えたこと-KYOTOyui 近藤芳彦氏

  • 2026年10月10日

 KYOTOyui代表の近藤芳彦です。今回は京都市東山区民として、また観光事業者として、京都市が導入を検討している「二重価格」について考えを述べたいと思います。

 山科区で生まれ育った私は、コロナ禍に東山区へ引っ越しました。産寧坂から徒歩3分の場所に暮らしていると、「観光公害」と言われても無理はないと感じる場面に、これまで何度も出会ってきました。

 引っ越した当時は、まだコロナ禍の最中でした。誰一人歩いていない産寧坂や八坂の塔周辺は、それまで見たことのない景色で、「東山に越してきてよかった」と心から思ったものです。

 ところが、コロナが明けてインバウンド客が戻った年のことです。仕事の移動にバスを使おうと、Googleマップで確認してから家を出たところ、バス停には観光客の長い行列ができていました。アポイントに間に合わないと判断し、やむなくタクシーに乗ったことを今も鮮明に覚えています。

 今でも感じるのは、私が普段歩く産寧坂は、地元の人にとって生活道路だということです。写真を撮る方や、食べ歩きをしながら立ち止まる方で道がふさがり、仕事に向かう私が足止めされることも少なくありません。それでも、長年観光業に携わる身として、「たくさんの方に来ていただけるのはありがたいことだ」と自分に言い聞かせて受け入れてきました。

 そんな中、先日の報道にもあったとおり、京都市が「二重価格」の導入に向けた方針を示しました。二条城では、入城券と二の丸御殿観覧券のセット料金を、現行の1300円から、市民は1000円程度に値下げし、市民以外は2000円に値上げする方針です。市バスも、大人の均一区間運賃を現行の230円から、市民は200円、市民以外は360円とする案が示され、私は複雑な思いを抱いています。

 ご存じの方も多いと思いますが、京都市がオーバーツーリズム対策として2024年6月に始めた「観光特急バス」(運賃500円)は、開始から2年以上たった今も、ガラガラの状態で走っているのをよく目にします。

 今回のバス運賃の見直しについて、まず疑問なのは、この観光特急バスの活用策は検討されているのか、という点です。また、市民の運賃が230円から200円になったとしても、素直に喜べるでしょうか。先ほど述べたように、バス停が観光客で混み合って市民が乗れないという課題が解消されない限り、市民の喜びにはつながらないと思います。

 さらに、市民でない方はご存じないかもしれませんが、バスに乗れず最も困っているのは高齢者の方々だと私は感じています。京都市の高齢者向け乗車証は、2022年から交付開始年齢が70歳から75歳へ段階的に引き上げられ、所得制限(所得700万円以上は対象外)も新設されました。個人的には、一律の値下げよりも、こうした高齢者施策の見直しを検討すべきではないかと考えます。

 そして二条城の料金についてです。市民料金を1000円に下げても、市民の入城が増えるでしょうか。そもそも京都市民で、清水寺や金閣寺、まして二条城に足を運ぶ人はあまり多くありません。訪れるのは、私のように観光業に携わる人や、里帰りした家族・遊びに来た友人を案内する人くらいが関の山ではないでしょうか。

 ここで、京都新聞の記事を一部引用します。

【京都新聞の記事より(抜粋)】

二条城では修理財源が不足する中、市民の入城料は300円引き下げる。入城者に占める割合が1.9%に過ぎない市民客を割り引く狙いは「市民に観光の恩恵を実感して、二条城を訪れてほしい」(松井孝治市長)ことにある。文化遺産の保存や継承には、まずは地元住民が地域の文化財の価値を知り、誇りを持つことが大前提となるためだ。

 市長の狙いである「市民の誇り」は大切だと思います。しかし、それが料金の引き下げだけで実現するのかは疑問です。皆さんは、京都市が進めようとしている「二重価格」をどう感じておられるでしょうか。ご意見をいただけると嬉しいです。

近藤芳彦
株式会社KYOTOyui代表取締役。トラベル京都代表。1972年3月生まれ、大阪トラベルジャーナル旅行専門学校卒業後、旅行会社に3年ほど勤めるが、結婚を機に退職し、その後は他業種に就いたものの2006年に旅行業を立上げ、2016年には法人の観光業を営んでいる。趣味は「旅×仕事」です