Booking.com、AIで“旅行会社的機能”が再来 勝負は「信頼できる予約」への接続
「AIから見えない観光地は、旅行者からも見えなくなる」
一方、生成AI時代には、地域側にも新たな対応が求められる。
三菱総合研究所AIイノベーション推進室長の比屋根一雄氏は、旅行の入口から滞在中、旅行後までAIが関与する未来像を提示した。
自身が京都旅行で生成AIを活用した経験を紹介し、旅行前の旅程作成だけではなく、現地で雨が降るなど状況が変化するたびにAIが旅程を組み替え、その場所に応じた飲食店や見どころを提案することに大きな可能性を感じたという。
その上で地域や宿泊事業者に対し、「AIに読ませる」「AIに売らせる」「AIを使って回遊させる」という対応の必要性を指摘した。
特に強調したのが、情報発信のあり方だ。
「AIから見えない観光地になってしまったら、それは旅行者からも見えなくなる」
比屋根氏は、宿泊施設やDMOなどが地域固有の魅力を言語化・映像化するとともに、情報をリッチかつタイムリーに提供する必要があるとした。予約だけでなく、変更やキャンセルまでAIから扱える環境を整えることも重要だという。
同時に、AIそのものが地域の価値を作るわけではないとも強調した。おもてなし、食、文化など、その土地にしかない価値をまず明確にし、それをデジタル上で理解可能な形にすることが出発点になるとの考えだ。
宿泊施設の「個性」もAIが拾う時代へ
生成AIは、宿泊施設側の商品訴求にも変化をもたらしそうだ。
会場の宿泊事業者から、自社施設の個性や魅力を価格以外で旅行者に伝える方法について質問を受けたウォーターズ氏は、これまでBooking.comでは旅行者が比較しやすいよう構造化された情報を重視してきたと説明した。
施設ごとに表示方法や説明を大幅に変えるとコンバージョンが低下するケースもあり、標準化された情報と施設独自の魅力を両立させる難しさがあったという。
しかしAI時代には「コンテンツは静的ではなくなる」とした。
旅行者が自然言語で求める体験を伝えれば、その内容から興味・関心を読み取り、施設が持つニッチな特徴やレビューなどと照合できる。従来の画一的な検索結果から、旅行者ごとに異なる施設の魅力を提示する方向へ進む可能性がある。
シュミット氏も、施設から提供される情報にユーザーレビューや外部データなどを組み合わせ、旅行者の意図に応じて動的に情報を提示していく考えを示した。また宿泊事業者側に対しても、生成AIを通じてBooking.comが持つデータをより利用しやすくし、例として「特定の月の需要を増やすには次に何をすべきか」といった質問に対して推奨策を提示するという。
AI時代、旅行流通の価値は「検索」から「信頼」へ
Booking.comがサミット当日に公表した「Travel Happiness Index」でも、日本の旅行者の82%が、信頼できるプラットフォームを通じて予約することで安心して旅行を計画できると回答した。また、55%が検索エンジンや予約プラットフォーム、AIなどにより選択肢を探し、比較しやすくなったとしている。
一方、同社とStatistaが実施した日本の宿泊事業者調査では、84%がオフシーズンの集客確保にデジタルプラットフォームが効果的と回答。AIについても、不正防止やサイバーセキュリティーなどへの期待が示されている。
今回のセッションでは、生成AIの活用が旅行先の検討や検索にとどまらず、予約や決済、旅行中のサポートなどにも広がっていく可能性が示された。
生成AIの活用範囲が旅行計画から予約、現地での支援へ広がるなか、旅行商品・サービスの提供や情報発信のあり方が今後どのように変化するかが注目される。


