Booking.com、AIで“旅行会社的機能”が再来 勝負は「信頼できる予約」への接続
「AIに全部任せる」には高いハードル
では、AIエージェントが旅行者に代わって航空、ホテル、体験などを自動的に探し、異なる予約サイトから最安商品を組み合わせるようになれば、OTAそのものが旅行者から見えなくなるのか。
会場からこうした趣旨の質問を受けたウォーターズ氏は、それをBooking.com自身も投資家から問われる「非常に大きな戦略的な問題」と認めた。
音声で旅程を伝え、それをもとに旅行商品を組み立てる技術自体はすでに現実味を帯びている。一方で同氏は、旅行者が選択肢を一切確認せず、AIにそのまま購入を任せるようになるかについては慎重な見方を示した。
旅行は「時間、金額、感情」のいずれの面でも負担が大きい。さらに、欠航、異常気象、予定変更などが発生した際、複数の事業者からAIが自動的に商品を組み合わせていれば、その後のサービスを誰が担うのかという問題が生じる。
ウォーターズ氏は、価格だけを条件にAIエージェントが商品を選ぶ世界についても疑問を示し、商品の提案品質や表示方法、トラブル発生時の安心感が引き続き重要になるとの認識を示した。
旅行会社に置き換えれば、生成AIによって検索や旅程作成のコストが下がっても、「選択肢を適切に絞る」「確実に手配する」「問題が起きた際に処理する」という機能の価値がなくなるわけではないことを示唆している。
地方誘客も「目的地検索」から「旅行者の意図」へ
生成AIによる検索の変化は、日本が課題とする地方誘客にも影響する。
政府は2026年3月に決定した第5次「観光立国推進基本計画」で、2030年の訪日外国人旅行者数6000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円の目標を維持するとともに、地方誘客の促進や新技術の活用を政策の柱に位置付けている。
ウォーターズ氏は、日本が6000万人を受け入れるには東京、京都、大阪など既存の主要観光地だけでは難しく、旅行者の行き先を多様化する必要があるとの認識を示した。
シュミット氏も、生成AIが旅行者の「意図」を理解することが地方分散の重要な手段になると指摘する。
旅行者自身が日本の地方都市を知らなくても、「静かな場所」「自然」「伝統的な旅館」「食」といった希望を起点に検索すれば、そのニーズを満たす地方の旅行先を提示できる可能性がある。目的地名を知っていることを前提とした従来型検索とは異なる送客経路が生まれることになる。




