価格転嫁4割台回復も、宿泊・飲食は依然低水準
帝国データバンクが2026年2月に実施した調査によると、企業の価格転嫁率は42.1%となり、前回調査から2.7ポイント上昇しておよそ1年ぶりに4割台へ回復したものの、依然としてコスト上昇分の約6割を企業が負担している実態が明らかとなった。特に宿泊や飲食など消費者に近い業種や小規模企業では価格転嫁が進まず、収益圧迫が続いている。
コスト上昇分を「多少なりとも価格転嫁できている」とする企業は76.9%に増加したが、その多くは部分的な転嫁にとどまり、「8割以上」または「全額転嫁」が可能な企業は限定的である。一方で「全く転嫁できない」とする企業も1割を超えており、価格転嫁の二極化が進んでいる。
業種別では、卸売業を中心に5割を超える転嫁率がみられる一方、消費者に近い川下産業である飲食店は32.8%、旅館・ホテルは28.2%と低水準にとどまった。旅行業界と関係の深い宿泊分野では、価格上昇が集客減少につながる懸念や競争環境の厳しさから、継続的な値上げが難しい状況だ。消費者の節約志向の強まりも、価格転嫁の抑制要因となっている。
また、医療や不動産など価格決定に制約がある分野では転嫁が進まず、医療・福祉分野では14.7%と極めて低い水準となった。制度や慣行により価格を自由に設定できない業態では、コスト増を自社で吸収せざるを得ない構造的課題が浮き彫りとなっている。
さらに、仕入れ価格が上昇した企業は71.5%に達したのに対し、販売価格が上昇した企業は45.8%にとどまり、価格転嫁の遅れが明確となった。価格交渉についても、実施している企業は仕入れ先・販売先ともに5割程度にとどまり、小規模企業では4割台に低下するなど、交渉力の弱さが転嫁の障壁となっている。


