「2030年クルーズ人口100万人」は実現できるか――最大課題は『需要』ではない、JATAクルーズ部会長・松浦氏に聞く
松浦 本質的には、構造の問題です。クルーズは、基本的に船会社が完成させた商品で、航空券やホテルのように旅行会社が自由に組み合わせて付加価値を出しにくい。さらに、日本の旅行業界は長い間、航空会社や鉄道会社との関係性を軸にビジネスを組み立ててきました。その中で、船を積極的に扱う動機が生まれにくかったという背景もあります。
松浦 これまでは一部の専門会社が市場を支えてきましたが、今後はより多くの旅行会社が「自社の商品ラインナップの一つ」としてクルーズを扱う必要があります。クルーズは一般的にコミッション水準が比較的高く、価格競争も航空券ほど激しくありません。商品理解さえ進めば、収益を確保しやすい分野だと言えます。また、参入している旅行会社がまだ限られているため、早く関わった会社ほどポジションを築きやすいという側面もあります。
松浦 日本船社がハイエンドに見られがちなのは、戦略というより制度やコスト構造の結果です。日本籍船は税制や規制の制約が大きく、価格を下げにくい。一方で外国船社は柔軟な運航で利益を確保できる。この違いを前提に、日本船社も商品設計や運営モデルを工夫していく必要があります。
松浦 個人旅行だけでなく、MICEや修学旅行、企業の報奨旅行など、団体・法人向けの分野には大きな可能性があると考えています。移動と宿泊、食事、会場が一体となっているクルーズは、団体利用との相性が非常に良い。これまで個人レジャー中心で語られてきましたが、旅行会社が強みを持つ法人・団体分野こそ、今後の拡大余地が大きいと見ています。
松浦 クルーズには、独自のルールが数多くあります。まず基本になるのがクルーズ約款で、取消条件や責任範囲などは必ず理解しておかなければなりません。また、取消料を担保する特約など、クルーズ特有の保険の考え方も重要です。
最近では、早期全額支払いによる割引制度を設ける船社が増えており、支払い条件や取消条件がより複雑になるケースもあります。こうしたルールは固定的ではなく、後から新しい制度が追加されることも多い。そのため、知識を一度身につけて終わりではなく、常に最新情報をアップデートしていく姿勢が欠かせません。クルーズコンサルタントの資格で定期的な更新試験が行われているのも、そのためです。