1人社長のリアル-MATCH 松宮英範氏

  • 2024年3月12日

 そんな訳で、朝は6時起床、ニュースを見ながらゆっくり目覚め、子供たちが学校に登校する頃、身支度を始め、まずは腸内をゆっくり整えたのち、町内をのんびりジョギング、26年耐え忍んだ痛勤列車とは縁を切り、徒歩で事務所か自宅でテレワーク。という実に体にいい朝のスタートを切っています。なんてことをのんびり話したりしていると、会社を大きくするつもりはないのか、雇用することが社会の意義ではないか…と、先輩経営者の方からは嵐のお叱りを受け始めます。雇用…重いテーマです。26年もサラリーマンとして、上司や部下・同僚と揉んで揉まれて疲弊して時には楽しくもやってきましたが、独立後も、またあの世界なのかぁ…。

 そこで、私は違う形で社会貢献することにしました。昨年、箱根にラグジュアリーヴィラ2棟で構成される一棟貸切タイプのリゾートホテルを開業したのですが、現地を管理する支配人とは業務委託契約を結んで対等なパートナーとして「一緒に」仕事しています。社員になってもらい雇用することも出来たのでしょうが、また当初、支配人はそれを希望していたかもしれませんが、敢えて法人を作ってもらい、会社と会社で対等の契約を結びました。結果、支配人夫婦は、毎日いきいきと仕事をし、経営者の自覚を持って日々、宿泊業に取り組んでくれています。積極的に施設をよくする、ゲストを喜ばせる提案をしてくれるし、2人のお陰で箱根の高級ヴィラとして開業半年で早くも頭角を現し、存在感のある施設となっています。

 社員ではないので、私の命など受けず、時間に縛られず、他の仕事をすることはもちろん可能だし、自由を享受し自分のライフスタイルを確立しているようです。また彼らの会社の今後の発展もとっても楽しみなのです。社員として雇っていたら同じ結果になったかというと甚だ疑問…社員の立場に甘え、時間に縛られ、漫然と仕事をしていては今の好結果はなかったと思うわけです。対等なパートナーとしてお互いリスペクトしながら楽しく仕事をしあえる関係は、雇用被雇用であるよりよほど健全で建設的だと思っています。(センパイ!すみません…)

MATCH

 たった1つでも、地方で会社が誕生し、その管理会社で清掃スタッフなどを雇い、現地の食材を提供する仕組みで地域が潤う。私が1人雇用するより、よほど日本が元気になる気がするのです。福沢諭吉の「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という一説は有名ですが、これは単にひとは皆平等であると言ったわけではなく、不公平・不平等が当たり前の世の中でその差を埋めるために努力が報われることを説いているそうです。雇用被雇用という主従関係に捕らわれないパートナーシップこそがその第一歩ではないでしょうか。

 ということで、今日もまた、同じ朝を迎えて、この原稿を書いています。次回はそろそろ、専門的なことを話し始めようと思います。ホテルビジネスに関して、今は、誰でもホテルオーナーになれる、すごい時代であることをお伝えします。


松宮英範
株式会社MATCH代表。大学卒業後、大手旅行会社で26年勤務。主に富裕層向けの海外ツアーを手掛ける。50歳を機に、コロナ禍の2021年に独立起業し、ニッチなホテルのプロデュースと集客支援を行う。インバウンド向けのミニホテルや長期滞在型のコンドミニアムホテル、関東近郊のリゾート地で展開する一棟貸切タイプのラグジュアリーヴィラなど現在12施設の運営や集客に携わる。その他、集客にお困りの施設の宿泊コンサルタントや、神奈川県で第3種の旅行業登録、各種講演や大学の講師なども務める。大阪出身、横浜市在住。