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ツーリズムEXPOが大阪で開幕、「成長戦略の柱」「地域活性化の切り札」の観光振興へ全力

 日本観光振興協会と日本旅行業協会(JATA)、日本政府観光局(JNTO)が主催する「ツーリズムEXPOジャパン2023 大阪・関西(TEJ)」が10月26日に開幕した。大阪での開催は2019年以来4年ぶり2度目。

 オープニングセレモニーで流されたビデオメッセージで岸田文雄首相は、「昨年10月の水際緩和以降、国内外の観光需要は急速に回復し多くの観光地が賑わいを回復している」として外国人の延べ宿泊数が直近のデータでコロナ前の水準を超え、1人あたりの消費額も20万円の目標を前倒しで達成したと言及。

 そして、観光は「我が国の成長戦略の柱」であり「地域活性化の切り札」であるとし、そのうえで「コロナ禍以前の姿に戻るのではなく、コロナ禍という変化を力に変えて観光産業の生産性、収益力の向上、観光地の高付加価値化を強力に推進」すると強調。オーバーツーリズム対策と地方分散も推進して「観光の恩恵が全国津々浦々に行き渡り、自然、文化の保全と観光との両立がはかられるよう」取り組み、「住んでよし、訪れてよし、受け入れてよしの持続可能な観光を実現する」と語った。

観光産業の「未来」意識、アウトバウンド復活に決意も

 セレモニー冒頭の挨拶で日本観光振興協会会長でツーリズムEXPOジャパン組織委員長の山西健一郎氏は、開催テーマが「未来に出会える旅の祭典」であるとし「パンデミックにより人々の価値観が大きく変化し、観光産業も未来に向けて進化する必要がある」なかで、TEJが「観光産業が一体となって新しい旅の形を体現」していくための舞台となると意欲を表明。

 また、インバウンドがコロナ禍からの回復が順調に進んでいる一方でアウトバウンドは遅れている状況に言及し、そのうえでJATA会長の髙橋広行氏の「海外旅行の復活なくして旅行業界の復活なし」との発言を引用。TEJを通して消費者に海外旅行の楽しさを体感してもらうことで「回復の足がかり」にしたいと語った。

会場ではジャパン・ツーリズム・アワードの表彰式も

 来賓として挨拶した観光庁審議官の石塚智之氏も、9月の訪日外客数が2019年比で96%となったのに対して日本人出国者数は57%に留まる状況であるとしたうえで、TEJが「観光需要の更なる回復への起爆剤となる意義あるイベント」と開催を歓迎。アウトバウンドについては岸田氏も「今月中を目処にとりまとめる経済対策を速やかに実行に移し、国民の皆さんが経済の熱量を感じられるように政府としても全力で取り組んでいく」とコメントしていた。

 アウトバウンドの現状について髙橋氏は、「回復度合いが5割程度だが純粋な観光はもう少し低い数値。まだまだ道半ば」であるとしつつ、「徐々に回復している基調にはある」と指摘。原因としてコロナ禍で海外旅行への意欲が萎縮しているのではないかとの分析。一方、TEJでも海外デスティネーションの出展を通して日本市場の回復にかかる期待の大きさを感じているといい、「一刻も早く回復させて期待に応えたい」とし、TEJやキャンペーンなどを通して需要回復に努めて「来年度の早い段階でなんとか2019年レベルに回復させたい」と目標を示した。

TEJ開催概要、若者の旅行需要喚起へ大学生・専門学校生も無料に

 今回のTEJでは、インテックス大阪を会場に国内635、海外490、その他317の合計1442コマの出展が集まった。参加国・地域の数は70となり、商談会はバイヤーが529人、セラーが1037人で5800件近い商談が交わされたほか、さらにJNTOによる訪日商談会「VISIT JAPAN トラベル&MICEマート(VJTM)2023」も4年ぶりに完全対面形式で開催され、6000件以上の商談が実施された。

 「未来に出会える旅の祭典」のテーマに合わせた企画として、アドベンチャーツーリズムや観光DX、SDGs、ワーケーションなどをテーマにした展示やセミナーが予定されているほか、さらに宇宙旅行のバーチャル体験なども用意。また重要な変化として、これまでは高校生までとしていた入場無料の措置を大学生と専門学校生にも拡大。Z世代への旅行の魅力発信を強化することが目的で、アイドルグループNMB48の3名も広報アンバサダーとして起用している。

(左から)広報アンバサダーに起用されたNMB48の小嶋花梨さん、出口結菜さん、塩月希依音さん

 加えて、2025年の大阪・関西万博に向けた企画やイベントも充実。11の企業と団体が出展する「大阪・関西未来ゾーン」が設けられているほか、基調講演でも万博の会場運営プロデューサーが登壇。また、国連世界観光機関(UNWTO)エグゼクティブディレクターのゾリティサ・ウロシェビッチ氏もオープニングセレモニーで万博について言及し、TEJで見られるイノベーションや官民連携によって「大阪は、2025年の万国博覧会に、万全の体制で世界の人々を迎えられるはず」と語った。

 TEJへの来場者数は業界日で4.8万人、一般日で10.2万人、合計15万人を見込んでいる。