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ワインに開眼して転機に-ツアコン2019大賞のジャッツ菅谷氏

-添乗の際に気をつけていることはありますか

収穫されたブドウと菅谷氏(写真提供:菅谷氏)菅谷 お客様の目線を忘れないことですね。自分も旅をする気分になって、物事を常にお客様目線で見るようにし、お客様が楽しまれているかどうかを気にしています。参加者のなかには奥様に連れて来られた旦那様など、あまり乗り気でなさそうな方もいらっしゃいますが、そういった方は空港に集合した時点で分かります。マイナスの気分をいかにプラスに持っていくかを考え、旅行中に1つでも多くのことを楽しんでいただけるよう、お声がけしたりするようにしています。

 学生さん向けのツアーの場合はフリータイムが多いので、時間を有効に過ごしていただけるよう、事前に最近の流行や人気店の情報を調べたりしています。最近はインターネットですぐに調べものができますし、人気のアプリを試したりすることもできて、便利な時代になりました。添乗のための努力というよりは、私自身がミーハーで知りたがりなので、楽しみながら情報収集に取り組んでいます。

-添乗人生において、忘れられないツアーやハプニングはありますか

菅谷 2015年に、フランスのシャンパーニュ地方でワインカーブ(貯蔵庫)を巡ったツアーが大変でした。楽しみにしていたポメリー社での試飲が従業員のストライキで急に不可能になり、しかもその日は休日で、ツアーオペレーターが代わりのカーブを手配できなかったところを自力で探し、何とか1軒見つけて対応していただけることになりましたが、この時ほどフランス語が役に立ったことはありません。しかもそのツアーは、旅程の後半でパリの同時多発テロ事件があり、私たちは無事でしたが、終始冷や冷やしたツアーでした。

 そのほかには1月のヨーロッパのツアーで、行きと帰りの両方でフライトがキャンセルになったことがありました。どちらも雪による影響でしたが、到着が1日遅れた上に、帰国まで1日遅れることになってしまい、あの時はせめて参加された40名のお客様がみな同じ飛行機に乗れるようにと思い、フランクフルトの空港内を奔走しました。

 文句を言われても仕方のない状況でしたが、お客様からは「そんなに駆けずり回らなくていいよ」と言っていただいて救われました。天候不順によるフライトキャンセルは免責であるにも関わらず、航空会社にはホテルを用意していただいたことも忘れられません。

 ハプニングがあった時こそ、ガイドさんやツアーオペレーター、航空会社の方々との連携が大事だと思います。また、23年もの間、本当にお客様に恵まれてきたと思っています。

-添乗業務以外で努力していることはありますか

菅谷 ワインが好きで、日本ソムリエ協会認定のワインエキスパートの資格を取得したことは、添乗業務において役に立っているだけでなく、添乗人生のなかで1つの転機になったと思います。ワインの勉強はエキスパートの資格を取得したらそれで終わり、というものではありません。ワインを学ぶことでヨーロッパの歴史を知ることができますし、ワインのトレンドも日々変わっていくので勉強することは尽きず、一生続けるものと考えています。

 そのほかにはお菓子作りも好きですし、NPO法人のチーズプロフェッショナル協会が認定する「チーズプロフェッショナル」の資格も取得しました。フランス語以外の語学は、レストランでの注文時などに役立つよう、英語とイタリア語を勉強しました。