アクセスランキング、1位はJTBの海外買収、LCC大手の流通回帰も

[総評] 今週は、ジェイティービー(JTB)によるシンガポールの旅行会社「ダイナスティ・トラベル・インターナショナル」の買収が1位でした。JTBではグローバル展開を経営戦略の柱の一つに据えており、昨年だけでもミャンマーとブラジルに現地企業との合弁会社を設立しているところですが、歩みを緩めないという意思が感じられるような気がします。

 日本の旅行業界から見た「グローバル」は海外旅行、訪日旅行、三国間旅行であり、それぞれに「発」と「受け」があるわけですが、国内に留まる限りは海外の発、訪日の受けにしか手を出すことができません。多方向の需要を自社内で獲得するためには、各国・地域に拠点を開設してメッシュのようなネットワークを作り上げていくことが求められます。

 もちろん、現地企業との提携による相互送客といった手段もあるでしょう。意思決定の自由度などを考えると変化の早い環境の中でデメリットもありますが、逆に身軽さがメリットになるかもしれません。

 このようなことを考えていますと、グローバル展開を進めているのはJTBなど日本の旅行会社だけではないわけですから、いつか航空会社のアライアンスのようなものが登場したら、などと思考が広がります。特定の国との間ではジョイントベンチャーの独占禁止法適用除外(ATI)を取得して、売上などをシェアする―などなど、思い付きですので可能性があるかどうかも分かりませんが、空想するには面白いアイディアです。

 さて、今週はこのほか、7位に入ったライアンエアー(FR)の話題も印象に残りました。FRは「LCC原理主義」的というか、安全は確保しつつ運賃を下げられるだけ下げる、その為にはどんな常識も疑ってかかる、といった考え方の会社で、例えば機内トイレ有料化、立ち乗り運賃などの突飛なアイディアもここから出ています。

 当然のことながら、1座席あたりの消費者価格を高くする旅行会社は好ましいはずがありません。特に、CEOのマイケル・オレアリー氏は過激な発言で注目を集める方で、旅行会社経由の流通に対してもかなり辛辣な否定の言葉がウェブ上で散見されます。

 そのFRが、業務渡航需要を獲得するためにGDSと契約し、旅行会社での販売に期待をしたということは、LCCとFSCの競争、そしてそれら航空会社と消費者の間に立つ旅行会社の経営の今後を考える上で非常にユニークな話題ではないかと思われます。

 個人的には、かなり前からLCCとFSCの区別は曖昧になっていくと感じ、当欄でも触れてきていましたが、ますますその傾向は強くなっていくでしょう。ただ、だからといってLCC登場以前の航空業界に戻ることもあり得ず、従って旅行会社を取り巻く環境もさらに変化していきます。

 グローバル展開にせよ仕入れにせよ、いつの時点で何を誰にどうやって売りたいか、売ることができるのかについて様々な視点から考え、手を打っていくことが重要ではないでしょうか。(松本)


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(2014年3月第3週:3月15日0時~3月20日18時)
第1位
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