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日本航空の破綻と再生、今後の戦略-大西会長 講演採録

  • 2012年3月5日

▽航空需要、国際線は25%の伸び、国内線は横ばいか

JL代表取締役会長の大西賢氏 現在の航空業界の環境について大西氏は、世界経済の動き、高齢化、新幹線整備を基礎的条件として説明した。

 世界経済については国際通貨基金(IMF)の資料を元に、2011年度から2016年度にかけて、日本は「なかなか経済成長を望めそうにない」、アメリカは「徐々に経済成長は良化、前進していく」、欧州は「読みにくい」が「成長もなければ鈍化もない。相対的にいえば成長率がひくい」、韓国、中国、台湾、東南アジア、中東、アフリカは「経済成長めざましい」と指摘。

 日本の高齢化については、もともと70歳以上の出国率、75歳以上の国内観光旅行参加率が低いことを勘案すれば、「業界にとってマイナスのインパクトを想定することが大前提」であるとし、新幹線についても2016年までに需要を16%奪われるとの見方を示す。

 こうした基礎的条件を踏まえ、JLでは国際線の航空需要は「日本の経済自体は鈍化する」一方で「東南アジアを中心に経済成長が見込まれる」ため、2016年までに「約25%の航空総需要の伸び」を予測。増えるのは日本発の業務渡航と、通過を含めた海外発の需要であるとした。一方、国内線の需要については、2016年までに0.5%減との見通しだ。


▽首都圏空港の増枠とLCC参入で「積み増し」可能

 大西氏は、こうした基礎的な予測を示した上で、首都圏空港の発着枠の増加とLCCの参入による変化に言及した。首都圏空港については、2016年までに羽田空港で20%、成田空港で36%の増枠が予定されている。首都圏空港の発着枠の増加分を国際線と国内線で分けると、「国際線は38%、国内は17%の増加が期待される」という。

 LCCについては、JLも関わるジェットスター・ジャパンなど数社が耳目を集めているところだが、欧州で「LCCが参入してそれなりの規模に到達した3年後、航空総需要は1.5倍に膨らんだ」ことを例示。その上で、「おそらく日本では総需要の伸び自体は1.5倍にまでは伸びない。10%、20%くらいの伸びになると思う」としつつ、「チケットプライスセンシティブのお客様はかならずいる」と予測した。

 欧州では、LCCの参入により既存航空会社の取り扱う需要が減少している。これについては、日本でも同様の傾向となる可能性はあるものの、いずれにしても航空需要の底上げにはつながるとの見方で、基礎的な予測の国際線25%増をさらに押し上げ、国内線0.5%減に新たな需要を積み上げることができるとした。