itt TOKYO2024

「登るウルルから観るウルル」、エアーズロック登山禁止も心配無用

17年の旅行目的、「登山」は17%
正しい情報発信で真の魅力アピールを


▽伝え方、魅せ方にも工夫の余地あり

カタ・ジュタの岩山。ここも撮影に厳しい条件が課されている

 ウルルと並んで外せないスポットとして挙げられるのが、巨大な岩山の集合であるカタ・ジュタだ。正確には「ウルル=カタ・ジュタ国立公園」として一体的に管理されており、ここもアボリジニの人々にとって聖地(聞くところによるとウルルよりも重要とか)。ただし、岩山の合間の一部には実際に足を踏み入れて散策することが可能で、その不思議な景色を中から楽しむことができる。

カタ・ジュタの「ウォルパ渓谷」。まるで別の惑星の地表を歩いているような感覚を味わえる

 ウルルとカタ・ジュタは、相当に雰囲気が異なる。これはウルルが砂岩でできているのに対してカタ・ジュタは小石が固まってできた礫岩であるため、岩肌にもその差が出ていることも一因だろう。それらを目にして感じたことは、そういった成り立ちを含めた地質学的なあれこれを、単にガイドが暗記した知識を聞くのではなく、その道のプロ、あるいはそれを愛してやまないマニアといわれるような人に解説してもらいたい、という欲求だった。地質「学」というと誰が興味を持つのかと思われるかもしれないが、地質学会から表彰された「ブラタモリ」が人気を博しているように伝え方次第だろう。

まるで点描のような大地。アボリジナルアートはもともと、準砂漠地帯の過酷な環境で水や食料のありかを伝えるために描かれたいたという

 さらに、アボリジニの文化も大きなポイントとなり得る。アボリジナルアートの定番である点描画は、実際には白人によってもたらされたものでその歴史は50年にも満たないとも聞くが、ウルルやカタ・ジュタ周辺の乾燥した大地に植物が点々と存在している様子を見ると、そう描くことこそ自然であるように感じられる。話をお聞かせいただいたJTBツアーのお客様も、ウルルの魅力に触れたことの次にアボリジナルアートの購入が嬉しかったと話されていた。ちなみに、アリススプリングスにはアボリジナルアートのギャラリーが文字通り軒を連ねているが、他の大都市よりも手頃な価格で入手することが可能だという。

準砂漠地帯の光景のなかをセグウェイで疾走するだけでもなかなか楽しい。年配の参加者も数分の練習ですぐに乗りこなせていたのでハードルは高くないはず

 また、ウルルにしてもカタ・ジュタにしても、その景観の楽しみ方には幅がある。今回の視察では、ウルルだけでもサンセットやサンライズ、フィールド・オブ・ライトのディナー、ヘリコプター、そしてセグウェイでのウルル周辺散策ツアーと様々な角度から眺める機会を得たが、同行のオーストラリア政府観光局のスタッフと筆者で意見が一致したのは、ウルルでのセグウェイが最も高満足度であったこと。

 間近でウルルの「傷跡」を生々しく感じながら、その異観の形成過程やアボリジニの人々が重ねてきた何万年もの年月を思う時間は、遠くから眺めるだけでは絶対に得られない充実した記憶につながる。欲をいえば自分のペースで走り気になる場所では立ち止まれると最高で、その意味ではレンタル自転車での散策が良い選択肢になるのではないかと思う。