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「登るウルルから観るウルル」、エアーズロック登山禁止も心配無用

17年の旅行目的、「登山」は17%
正しい情報発信で真の魅力アピールを

これぞウルル、の1枚だが、これに印象が限定されるのは非常にもったいない

2019年10月26日から登山が完全に禁止されるウルル(エアーズロック)。残り約1年間となった今、日本市場では駆け込み需要が生じており、旅行会社もその取り込みに余念がないところ。そして同時に、登山ができなくなってからの需要減退を懸念する旅行業界関係者も多い。しかし、今回JTBが実施したアリススプリングスへのチャーター便に搭乗する機会を得て現地を取材し感じたのは、「心配無用」だ。「ポスト登山」を前向きに迎えるヒントとなることを期待しまとめる。


▽ウルルの魅力は多様な岩肌、悠久に思いを馳せる

JL B787型機。JTBによるチャーターは、JTBのグローバルデスティネーションキャンペーンの一環で実施された

 筆者にとっても初めての訪問だったウルル。出発前の段階で職業柄多少の知識は持ち合わせていたものの、抱いていた印象はおそらく一般消費者とほぼ同レベル。つまりは「オーストラリアといえば、のシンボル的な赤い巨岩」といった程度のものだった。

 これに対して今は、2日と少しの滞在であったにも関わらずその圧倒的な存在感が強く記憶されている。この印象の変化について理由を自問すると、ひとつにはウルルが持つ真の魅力を知る機会がなかったことが原因ではないかと思う。それは何かというと、かの巨大な岩に刻まれた無数の穴や亀裂であり、近づくとその一つひとつが驚くほど豊かな表情を見せてくれるのだ。

この写真も、左側におぼろげに写る「傷跡」がもう少しはっきりと映っていれば掲載が認められなかった

 それらは大きさも形も千差万別で、あるものは丸みを帯びた形状で、またあるものは鋭く切り立った縁を残し、ウルルが今の姿になったという7000万年前からこれまでの時間の積み重ねを悠然と物語る。歴戦の勇者の身体に残る傷跡のよう、と表現してもいいだろう。

 業界関係者であればおそらく既知の通り、ウルルは先住民族であるアボリジニの人々にとっての聖地。だからこそ世界遺産の「複合遺産」として登録されているわけだが、聖地となったことが極めて当然と思えるほどの神秘性を備えていた。

厳しい暑さの10月の訪問だったが、各国から多くの旅行者が集まっていた

 そして本当は当然それを写真で紹介するべきなのだが、それらの穴や亀裂はアボリジニの人々にとって重要な意味を持ち、カメラで写し取られることを嫌うのだという。無数の「傷跡」が強く印象的であること、そしてそれは写真では紹介できないこと。この事実こそ、日本で暮らしているだけではウルルが持つ本来の魅力について気付きにくい理由のひとつではないかと思う。