幅広い事業展開でコロナ禍を乗り切る―運航支援・チャーターのWAB代表取締役 犬塚耕一氏

WAB代表取締役の犬塚耕一氏
インタビューはオンラインで実施した

 プライベートジェット機というと、国の要人や経済界の大物、一部の富裕層のみが使うもので、一般人には縁のない世界というイメージがある。旅行業に携わっていてもプライベートジェット機のチャーターを手掛けた経験のある方は多くはないのではないだろうか。観光産業にとっては近いようで遠い業界だが、いまここで新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の影響が思わぬ結果をもたらしているという。チャーター機の手配や航空機の運航支援などを行うWAB株式会社の代表取締役、犬塚耕一氏に話を伺った。インタビューは11月30日に実施した。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

-まずはご自身のご経歴をお聞かせください

犬塚耕一氏(以下敬称略) 元々はプライベートジェット機のパイロットをしていました。アメリカの航空留学機関で訓練を受けて免許を取得し、フロリダのオーランド-キーウエスト間の日本人向け遊覧飛行のパイロットを務めたのが初めての仕事でした。

 帰国後は航空機の地上運航支援を行う会社で地上職に就きましたが、3年ほど経った頃、本当にラッキーなことにプライベートジェット業界では世界最高峰のジェット機であるガルフストリーム機のパイロットとして働く機会を得ました。

 その後1999年に日本でガルフストリームの商権を持っている丸紅エアロスペースに転職します。同社ではガルフストリーム機の販売のみならず、新たに機体販売後のアフターケアも加えたサービスを展開するということで、商社マン兼パイロットとして入社することになりました。

 それからはプライベートジェット機のセールスや機体を購入されたオーナーに対しての運航マネジメント、整備、格納、運航支援サービス全般やパイロット派遣などを数年続けましたが、かなり高額なこの手の商品は年に何機も売れるものではないため、並行してプライベートジェットチャーターや旅客機のチャーター事業などにもビジネスを展開していきました。大手旅行会社の方々とは、オーストリア航空でのウィーン向けチャーター、エア・タヒチ・ヌイでのパリ向けチャーター、メリディアーナ・フライでのイタリア向けチャーターなどで大変お世話になりました。

-丸紅エアロスペースには15年在籍されましたが、独立を決意したきっかけは何でしょうか

犬塚 WAB(WORLD AVIATION BUREAU)会社ロゴ

 以前から起業してみたいという気持ちはあったのですが、背中を押してくれたのはガルフストリーム機オーナーでもある上場企業経営者の方の言葉です。「会社を発展させるためには第一に会社の社員を大切にする、その社員とその家族を守るために自分が一層頑張らなければならない。けれども限られた人生の中で守りに入らず、自分がやりたいことにも積極的に挑戦する。」というもので、改めて自分がやりたいことは何かと考えたとき、やはり長年関わってきた航空事業は面白く、ここでの経験や人とのつながりをもっと大切にしたいと思いました。丸紅エアロスペースを退職してから独立に至るまで、航空支援会社の社長も経験してきましたが、オーナーシップのある代表という道を選んだのも、これまで培ってきた航空に関する経験や経営ノウハウを最大限に活用して、やりたいことに挑戦するためです。