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新会社でリアル店舗の可能性追求-日本旅行リテイリング

新サービスでデジタル世代も店頭に誘導
コロナ禍は店舗の価値を見直す機会に

-リアル店舗が今後も存在意義を示すために必要なことは何でしょうか

新たな相談サービス「旅er」のトップ画面 大槻 インターネットではなく、対面で相談した方が安心して購入できる旅行先やエリアへの商品、あるいは周遊型商品の販売を強化することだ。そのためには旅行先などに関する十分なコンサルティング力を、店舗に蓄えなくてはならない。新会社では新たに「コンシェルジュデスク」などの取り組みも展開する予定だ。

 インターネットは便利だが「検索疲れ」という言葉も聞かれるし、氾濫する情報のどれが正しいのか専門家に聞いてみたい、そして背中を押してもらいたい、といったニーズは確実に存在する。また、馴染みの店舗や良く知っている店員からこそ購入したいというお客様も依然として多く、最終的には人と人との結びつきが価値を発揮する。

 とはいえこれからは、デジタルネイティブな世代が市場の中心になっていく。来店していただくための入口については、これまでのようなアナログな手法ではなく、デジタル技術を大いに活用することも必要になる。

-新会社の発足に先立ち2月に開始した、オンラインの海外旅行相談サービス「旅er(タビラー)」の反響はいかがですか(関連記事)

大槻 得意分野を持つ店舗スタッフをウェブサイトでプロフィールや写真とともに紹介し、相談したいことがあれば友達感覚で気軽に問い合わせてほしいと呼びかけている。目的は来店のためのきっかけ作りで、お客様のなかには「いきなり店舗を訪問して見ず知らずの店員に相談するのは気が重い」という方も多いはずと考えて開始した。

 開始から間もなくCOVID-19の拡大が深刻化したが、当初は週に20件程度の利用があり、そのうち2割ほどが成約につながるなど、反応は悪くなかった。情報発信者の顔が見えることはやはり大きな強みで、これまでは少なかった若年層が多く利用して、客層は広がったと思う。将来的には対象を国内旅行にも広げ、SNSとの連携やチャットサービス化などもにも取り組みたい。

-店舗販売における競合他社との差別化について、どのように考えていますか

大槻 JR東日本グループの「びゅうプラザ」が店舗閉鎖の方針を打ち出し、JR北海道も旅行店舗の閉鎖を決めた。大手の旅行会社も店舗網を縮小させているが、まずはそのような状況において、あえて店舗専門の会社を作ることを選択したことが他社との大きな違いといえる。

 商品については、特徴ある自社商品を売ることで差別化をはかることができるはずだ。例えば「おとなび」や「JR西日本ジパングクラブ」の会員向け商品や、独自の企画商品、イベント関連商品などの販売を強化する。また、レストラン予約や名産品の通販など、旅行以外のサービスを幅広く取り込んでいくことも、差別化の一環として考えている。

 これからの店舗スタッフは、旅行について知っているだけでは通用しなくなるので、研修などを強化し、観光地や宿泊施設などに限らず、現地の歴史や文化などについても大いに学んでもらえる環境を作りたい。営業スタッフのように取引先との会話のなかでさまざまな話題に触れることが少ない分、より注力して鍛えていきたいと思う。