itt TOKYO2024

デルタ、アジア戦略変更も「日本の価値変わらず」-森本社長インタビュー

羽田昼間枠獲得で「ステップアップ」へ
関空/シアトル線再開にも期待

-昨年秋から、新たなビジネスクラスやプレミアムエコノミークラスを搭載したA350-900型機を導入していますが、反響はいかがでしょうか

森本 DLは米系キャリアでは初めてのA350-900型機を、成田/デトロイト線に導入した。新しいテクノロジーを満載した最新鋭の機材で、機内の居住性はかなり向上した。また、オーバーヘッドビンも広く、使い勝手がさらに良くなるなど、すべての面で機能がアップしている。個室型のビジネスクラスもDLがいち早く導入した。

 DLはフルフラットシートもいち早く導入したが、それが今では第1世代として一巡した感がある。そこから学んだことを最新のビジネスクラスに活かしているため、お客様の評価は極めて高い。

 最新のプロダクトはすべての日米間路線で使用する予定だが、今後は11月に羽田/ミネアポリス線、来年3月に成田/シアトル線、成田/アトランタ線、羽田/ロサンゼルス線に導入する。A350-900型機と、同様に機内を改装したB777-200ER型機で運航する。


-今年の春には、大韓航空(KE)とのジョイントベンチャーを開始しました。アジア戦略についてもお聞かせください

森本 DLはかつては成田にアジアのハブ機能を持ち、そこから上海、北京、ソウルなどの各地に運航していたが、近年は戦略が大きく変わった。主な理由は東アジアの主要都市から米国への直行便需要が拡大したためで、DLにとって日本市場の価値が下がったわけではない。実際のところ、現在もアジアにおいては日本での売上高が最も大きい。

 米国から見れば、東アジア以外の東南アジアなどに運航する場合に、自社で飛ばすのか、アライアンスパートナーとの協業で飛ばすのかを考えると、パートナーと組んだ方が良い。KEとのジョイントベンチャーは、仁川から東南アジアなどにつなぐための戦略で、例えば米国から仁川経由で日本につなぐことはありえない。東アジアの大都市である東京、大阪、名古屋、上海、ソウルなどは、あくまでも米国からの直行便で結ぶ考えだ。

 成田をアジアのハブとしていた頃は大型のB747型機を飛ばし、旅客の内訳は日本発・米国発・アジア発が3分の1ずつだった。現在では成田からアジアへのネットワークは縮小しているのが、日本発の需要そのものに変わりはない。実際に、日米間路線では現在、5社が1日40便ほどを運航しているが、そのうちの2割をDLが占めているし、日本発のビジネス需要は中国や韓国よりも大きい。


-成田/アジア間のネットワークが縮小すれば、日本支社も規模の縮小を迫られるのではないでしょうか

森本 10年にノースウエスト航空と合併した直後の日本支社には1000人ほどの社員がいた。コールセンターやフライトキッチンは自社で持ち、ホテルも運営していた。しかしその後はコアの航空事業に資源を集中して、フライトキッチンとホテルは売却し、コールセンターも集約したのでその分の社員は減っている。

 とはいえ、アジア路線が減ったからといって、必ずしもセールスの人員が削減されるわけではない。日本で販売する座席数は変わらないし、以前と比べると法人顧客も増えている。成田/アジア路線の縮小は、DLにとってそれほどインパクトがある話ではない。


-今年5月にはサイパン線とパラオ線からも撤退されました

森本 日本から最も近い米国として、また美しい海を持つリゾート地として、かつてはほとんどの観光客を日本人が占めていた。デスティネーションとしての価値は依然として高いと思うが、しかし現在は中国や韓国などからLCCが飛び、マーケットが変化してきた。FSCのDLとLCCとではビジネスの方向性が異なるし、サービスの質を落としてまで価格競争をすることは望まない。