「共感」で若者の海外旅行離れに歯止めを-JATA経営フォーラム

  • 2018年3月7日

旅行会社はビジネスモデルの転換を
店舗など活用しコミュニケーション強化

若者は旅行会社よりも「共感できる一般人」を重視

堀氏  クロス・マーケティンググループの市場調査会社であるリサーチ・アンド・ディベロプメントでビジネスプロデューサーを務める堀好伸氏は、「若者は社会の鏡」と持論を展開。「スマートフォンが普及し、全世界の人々がインターネットでつながる社会になったことで、若者も変化した」と語った。

 変化の一例としては、同氏がパッケージツアーに参加して海外を旅行したある青年と話した際、青年が「その場所にいて見る感動はあったが、想像通りだった」と語ったことを紹介。旅行前にスマートフォンで大量の情報を得られることから、「旅行自体がスマートフォンで見たことの『答え合わせ』になっており、感動が薄れているのでは」と述べ、「事前に得た情報で疑似体験する『シミュレーション消費』をどう乗り越えるのかが課題」と話した。

 また、「若者は(口コミサイトなどの)特定のジャンルで有名、または自分のプロフィールに近い、共感できる一般人の情報を重視している」と説明。18歳から25歳までの女性100人に旅行情報の収集方法を質問したアンケートで、全体の67%がInstagramまたはTwitterでの検索を挙げたことなどを紹介した上で、「若者が最初にアクセスするのは旅行会社の店舗ではなくソーシャルメディア。本来は旅行会社の店頭に、若者が最初に相談に行ける窓口があるべきだが、現状はそうなっていない」と指摘した。


「旅行会社の若者離れ」も課題

 こうした若者の動向を受け、縄手氏は「従来型ビジネスモデルからの転換」の必要性を説いた。同氏によれば、JTBの学生向け海外ツアー「ガクタビ」を利用する20歳から24歳までの若者の半数が1月から3月にかけて旅行に行くが、16年に大学生などの採用活動の選考開始時期が8月から6月に前倒しされたことで、以降は就職先が決まった学生が9月に卒業旅行に行くケースが増えているという。

 ただし、9月の学生旅行商品の造成は、夏のパッケージツアーの手配や10月以降の下期商品の造成などで忙しいことから「手が回っていない」状況。「以前は航空券が安い1月から3月に、多くの若者に旅行してもらうことで、スケールメリットを取ろうとしていた」と振り返り、現在は訪日客の増加や航空機の小型化による座席の減少などで市場環境は変化しているが、「1月から3月に卒業旅行を売るというビジネスモデルに変わりなく、若者市場(のニーズ)から離れてしまっている」と省みた。

 縄手氏の意見を受けて堀氏は「若者の旅行離れではなく、旅行会社の若者離れが起きているかもしれない」との見方を示し、「ビジネスモデルを変革すれば若者に振り向いてもらえるのでは」と提案した。