ANAHD、15年度は過去最高の増収増益-今期は地震の影響も

  • 2016年5月8日

ANAHD上席執行役員の平子氏  ANAホールディングス(ANAHD)の2016年3月期(15年4月1日~16年3月31日)の連結業績で、売上高は4.5%増の1兆7911億8700万円、営業利益は49.1%増の1364億6300万円、経常利益は94.7%増の1307億2500万円、純利益は99.2%増の781億6900万円となり、いずれも過去最高となった。ANAHD上席執行役員の平子裕志氏は4月28日の会見で「旺盛な訪日需要や円安の影響を受け、国際線旅客事業が好調に推移したことなどから大幅な増収になった」と説明。営業費用については、事業拡大や円安により生産連動費用が増加したが、燃油費が減少したことなどから2.0%増の1兆6547億円に抑えた。

 航空事業は売上高が4.6%増の1兆5532億円、営業利益は71.1%増の1397億円。事業規模を拡大した国際線を中心に収入が増加したことなどにより、好調に推移したという。このうち国際線は旅客数が13.3%増の816万7000人、旅客収入が10.1%増の5156億円。欧米やアジア路線のビジネス需要が好調に推移していることや、全方面からの旺盛な訪日需要の取り込みにより、旅客数、旅客収入ともに前年を上回った。

 平子氏によれば、欧州で起きたテロ事件の影響については、昨年11月のパリでの発生直後は羽田/パリ線のロードファクターが急減したが、4月と5月の予約は6割後半まで回復したという。3月のブリュッセルでの事件については「(成田/ブリュッセル線は)まだまだ回復しておらず、4月と5月も予約は5割台」と説明。「夏場になるまでこの2路線は厳しい状況が続くのでは」と見通しを示した。その一方で、羽田/フランクフルト、ロンドン線などについては「非常に好調」だという。

 座席供給量を表す有効座席キロ(ASK)は10.6%増、旅客輸送量を表す有償旅客キロ(RPK)は14.0%増となり、利用率は2.3ポイント増の74.3%に。客単価は燃油サーチャージの減少などで2.8%減となった。

 国内線は北陸新幹線の開業などの影響で、旅客数は1.2%減の4266万4000人と減少したが、需要動向に応じて各種運賃を柔軟に設定したことなどから旅客収入は0.3%増の6856億円となった。ASKは1.3%減、RPKが0.3%減で、利用率は0.7%増の64.7%。単価は1.6%増だった。北海道新幹線開業の影響については、東京/新函館北斗間を最短4時間2分で結ぶことについて触れた上で、「4時間を超える路線とは十分戦っていける」とコメントした。

 マイレージや整備収入、バニラエア(JW)、機内販売収入などによる航空事業のその他の収入は18.4%増の1965億円だった。JWの旅客数は48.3%増の169万1000人、利用率は5.0ポイント増の85.3%となった。空港の地上支援業務などの航空関連事業の売上高は3.6%増の2319億円で、営業損益は42億円の赤字(前期:営業利益90億円)だった。

 旅行事業は売上高が1.0%減の1673億円、営業利益が6.0%減の42億円。海外旅行では円安や欧州でのテロ事件などにより「ANAハローツアー」の取り扱いが減少した一方、国内旅行では「ANAスカイホリデー」で沖縄や北海道方面を中心に取り扱いが増加し、売上高は前年を上回った。訪日旅行については、台湾や中国本土からの需要を取り込んだことで前年超えに。このほか、商社事業は売上高が10.4%増の1402億円、営業利益が30.6%増の53億円だった。

 今期の通期連結業績の見通しについては、売上高は1.1%増の1兆8100億円、営業利益は6.3%増の1450億円、経常利益は0.5%減の1300億円、純利益は2.4%増の800億円を予想する。熊本県などで発生した一連の地震の影響については、熊本路線を本来の7割程度まで減便していることから、平子氏は「影響はどうしても出てくるだろう」と説明。ANAセールスでは地震が発生して以降、九州発着の国内旅行で8000名のキャンセルがあったことを伝えた。