週間ランキング、1位は海旅復活への道、震災から5年

[総評] 今週は、先日開催されたJATA経営フォーラム2016の分科会Aでの議論についてお伝えした記事が1位になりました。この分科会は、日本旅行業協会(JATA)理事・事務局長の越智良典氏がモデレーター、JTBグループ本社執行役員旅行事業本部副本部長の伊藤智氏、全日空(NH)常務取締役執行役員営業部門統括の志岐隆史氏、日本航空(JL)執行役員旅客販売統括本部副本部長の二宮秀生氏がパネリストとして登壇したもので、この顔ぶれだけで1位になる理由として十分ではないでしょうか。

 詳細は記事をご覧いただければと思いますが、個人的には二宮氏が地方発海外チャーターを「昔の話」と話されている点が意外でした。最近はお話をお聞きできていないものの、トラベルビジョンではJLのチャーターご担当者の方への取材を続けてきたところで、特に地方チャーターはその土地出身の乗務員をアサインするなど「ご当地チャーター」が好評とお聞きしていました。

 「海外旅行」というものを扱うビジネスを検討していく上で、行き先や現地滞在中の体験は、インターネットを通して消費者が次々に新しい可能性を発掘、共有し、旅行会社はそれに追いつくので精一杯になってしまうわけですが、ご当地チャーターの取り組みはまったく別の工夫であり、新しいアプローチのヒントになると考えていたので少し残念に感じます。

 また、企業規模の違いに関する指摘も目を引く記事でした。例えば3ページ目では、2000万人をめざして旗を振るJATAと大手以外の旅行会社とのギャップについて指摘する部分がありますが、確かに業界誌の立場からしても温度差のようなものが感じられる場面は多々あります。

 もう一つ、2ページ目にある伊藤氏のご発言も大手の強みを感じさせる内容です。買い取りなどのリスクを取ってでも座席を確保しJTBグループの販売力で売り切るというもので、つまり仕入力と販売力の循環をリスクテイクによってさらに強化することを意味すると考えられ、規模の経済や体力からするとそう多くの会社が追随できるものではなさそうです。

 もちろん記事でも触れられている通り、生き残りをかけて目の前の課題に集中することは責められるようなことではありません。ただ、もう少し先の未来にまで想像を広げれば、会社の規模やリスクの許容量など実情を考慮しながら様々な形で投資をしていく、攻めの意識を持つことが必要になるように思います。

 ところで、未来という言葉で真っ先に思うのは、ちょうど発生から5年が経過した東日本大震災からの復興です。本稿を書いている横ではテレビ各局が震災の特番を組んでいますが、3月11日だけ思い出せば良いのかと感じる一方で、自分自身が毎日意識をして暮らせているわけではないことにも気付かされます。

 正直なところ、忘却が即ち悪だとは思えません。例えば3月10日は東京大空襲の日とされていますが、その犠牲者を翌日の震災と同じように悼んだ方はほぼいないのではないでしょうか。過去を遡っていけば、それこそ365日すべての惨事が見つかるはずです。

 とはいえ、3.11以降のこの時代を生きる人間として、自身や後世の生き方に影響を与える要因については忘れて良いわけがなく、例えば津波に関する注意は戦争の悲惨さと同じように語り継がなければなりませんし、原発にしても人智を超える天災が前提でありどうにかして利用しない方向で前に進むべきと考えます。

 そもそも、今も17万人以上が避難生活を余儀なくされているという現実に対して、それは旅行・観光業には関わりのないこと、とお考えの読者の方も1人もいないのではないでしょうか。

 環境省の「みちのく潮風トレイル」や「JATAの道」など観光による支援はこれまでもなされているものの、いうまでもなく復興はまだまだ途上です。観光は裾野の広い産業であり、送客自体が支援になりますし、ダークツーリズムという関わり方もあり得ます。

 人にされて嫌なことはするな、してもらって嬉しいことをしろ――これは私が両親から口を酸っぱくして言われてきた言葉ですが、被災地に留まっておられる方々の望みが何か、それを確かめるためにまずは自分が行ってみるのも一つの手ではないかと考えています。(松本)


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