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新春トップインタビュー:ANTOR-JAPAN会長 エドワード・トゥリプコヴィッチ・片山氏

今年は送客に加えて組織強化にも注力
ツーウェイツーリズム促進も

─旅行会社が今後、競争力を高めていくために必要なことは

片山 欧米とは違って、日本の旅行会社にはデスティネーションの専門家が少ないことが問題だ。観光局がファムツアーやセミナーなどを実施して投資を続けても、大きな旅行会社などは短いスパンで担当を変えてしまうので、人材養成の効率が良くないと思う。結果的に、競合他社の商品を参考にして定番商品ばかりを造成するようなケースが見られることになる。

 一方で今日のFIT層は、自らインターネットなどで情報を収集して、旅行会社の担当よりも詳しい知識をもっている場合がある。旅行会社もその動きに対応していく必要があるだろう。むしろ現在のそのような状況こそ、旅行会社がスペシャリストを養成するチャンスと言えるのかもしれない。

 OTAについては、非常にいいサービスを提供していると思う。情報収集や予約がしやすく、FITやSITにはメリットが大きい。観光局とOTAの協働はまだまだ少ないが、今後はANTORでも進めていくことになると思う。ただし従来型の旅行会社とも協力関係は続ける。その辺りはオープンに進められればいいと思う。

─2015年の海外旅行市場の展望は

片山 2013年頃から訪日旅行が大きく盛り上がっているが、近いうちにその勢いが、ツーウェイツーリズムという形で日本人の海外旅行に結びつき始めるのではと考えている。旅行において1番強くその人の心に残るものは、景色などではなく、やはり人間関係だ。訪日外国人旅行者を迎える日本人も、外国人という異文化と接することで、海外を知りたいという意欲が生まれる。急激に日本人出国者数を伸ばすことは難しいとしても、期待はできると思う。

 在日観光局の多くは自国への送客に一生懸命で、ツーウェイツーリズムに熱心なところは少ない。しかし、日本への送客支援にもオープンな気持ちを持っていることを示すことができれば、JATAや観光庁などとも連動して、双方向の交流が促進されるのではないだろうか。この時代に自国への送客だけを考えているよりは、ツーウェイツーリズムを促進した方が長期的にはメリットが大きい。