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新春トップインタビュー:ANTOR-JAPAN会長 エドワード・トゥリプコヴィッチ・片山氏

今年は送客に加えて組織強化にも注力
ツーウェイツーリズム促進も

─2014年も海外旅行市場は伸び悩みましたが

片山 日本人の出国者数は、ヨーロッパなどをはじめとして低迷している印象が強いが、中国や韓国への旅行者数の減少を別にすれば、全体的にはそれほど悪い状況ではないと思う。特に若者が旅行しなくなったというが、市場が求める数に及ばないだけのことで、全く旅行していないわけではない。

 これまではシニア向けのプロモーションに力を入れてきた観光局が多かった。しかし最近では、インターンシップに参加したり、学生を海外に招待したりと、若者向けの取り組みを始めているところも多いので、伸びが期待できるのではないだろうか。あとは30~40代女性のFITなども好調で、プロモーションも多くなってきている。

 プロモーションの方法はさまざまだが、それぞれ認知度を向上させるためには、やはりテレビなどのメディアの活用が重要だと考えている。メディアでの露出は消費者と旅行会社の両方に刺激を与えるので、定番以外の旅行商品のバラエティが増すことにつながっていくと思う。

─各国の日本市場に対するアプローチは変化していますか

片山 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決定したことで、日本人の意識は大きく国際化に向き始めたし、国内にはポジティブなエネルギーが生まれていると思う。しかしまだまだ市場には元気が足りないため、予算を削減されているところが多い。小さな国ではスタッフが1人だけというケースも見られるし、そもそも日本に事務所がない場合もある。加えてどこの国も、急激に発展している中国市場を無視することができない。

 ただしどの国も、アジアのトレンドメーカーは日本だと考えているので、日本に注力していきたいという気持ちは強い。日本には海外旅行の歴史があり、日本で盛り上がったブームは中国や韓国などの周辺国にも波及していくが、その反対の流れは少ない。日本でうまく盛り上げることができれば、それをアジア各国に広げていけるという意識がある。だから日本人に満足してもらうためには、現地の受け皿も日本市場への対応を進める必要があるだろう。

 円安傾向の継続は、観光局にとっては予算が増える場合もあるが、やはり大きな問題だ。特に米国や欧州など長距離方面にとっては影響が大きい。アベノミクスがこれからどうなっていくかも分からない。引き続き、「Team EUROPA」で協力関係にあるJATAなどとの協働を続けていくが、さらに海外旅行が低迷するようなら、商工会議所などの他団体とも情報交換をおこない、共同で政府にメッセージを送るなど、攻めの姿勢も取っていきたい。